ICT産業の暗い未来伴大作の木漏れ日(2/2 ページ)

» 2009年01月19日 16時49分 公開
[伴大作(ICTジャーナリスト),ITmedia]
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ICTに関して

 仕事柄、大手のコンピュータベンダーの地位の高い人と話す機会があります。そんなときに2009年の予測を聞いているのですが、現在はほとんど影響を受けていないというのが大方の回答です。ただし、来年度の予想を聞くと人により回答がまちまちです。

 前記したように、市場の大幅な縮小を予測する人は今のところ少数にとどまっていますが、その人たちは概ね20%以上減少すると語っています。一方で、強気な予測をする人たちもいます。ICTが企業の根幹に根ざした今、それへの投資をとどめるということは市場競争から敗退することを意味するので、それ程大きくは減少しないというのが彼らの意見で、大半を占めています。

 僕は両方の意見が正しいと思います。日本経済全体に対し悲観的な見通しをする人たちと同様、景気は大幅に落ち込むでしょう。しかし、ICTへの投資は恐れているほど低下しないと考えています。ただし、投資コストに関しては消費者の目は一層厳しさを増すのは間違いなさそうです。つまり、不況下でのベンダー間競争の激化です。

 ハードウエアの競争は既に相当進んでいるものの、今回の競争で最終局面を迎えそうです。この競争はハイエンドサーバから、低価格普及品、クライアントPC、モバイルネットワークデバイスまで広く及ぶ。中でも、ボリュームゾーンのデスクトップタイプやラックマウント型サーバの競争は熾烈を極めるでしょう。

 ソフトウエア産業は受託開発事業者以外、今のところ、全く不況知らずの状況ですが、やがて、OS製品に関しては、今年下期から、パッケージ製品のベンダーに関しても、クライアント系は今年後半から厳しさを増してくるでしょう。OS製品は大型分野まで、Linuxが普及する可能性が高いこと、ベンダーLinuxが一般化しつつあることなどから、有償OSの将来性は厳しいといわざるを得ない。

 パッケージ製品は、日本独自のメインフレーム文化が次第に廃れてきたため、パッケージ導入に走る企業が今後も増加すると見られます。クライアント側アプリケーション、典型的な製品はMS/Officeですが、Linuxの台頭により、従来のような価格戦略を取りにくくなってきています。

 マイクロソフト社の収入の半分程度がOS、Officeからの収入であるといわれているので、Officeの不振は経営の根幹を揺るがしかねません。システムインテグレーターにとってはさらに厳しい状況が待っているようです。確かに、メインフレームのリプレース需要は増加するでしょうが、競争が一段と激化するのは間違いありません。市場規模が限られている上、これまで、受託開発、人員派遣を主にして企業の参入が予想され、競争が一層過熱するのは避けられません。

 オフショア開発も今まで主戦場となってきた米国市場が先細りするのは確実で、インド、ベトナムの企業が一斉に日本市場に参入するのは間違いないでしょう。ともかく、今年の前半は大変な事態に陥るのはほぼ確定的です。「我慢比べ」でしょう。

 ここで、市場から脱落する業者が一社でも多く出てくれれば、今後有利な条件でビジネスを進められるという思惑も見えてきています。しかし、果たしてそうでしょうか。いままでのように国内の事業者で限られた市場を分け合ってきた日本市場で、ライバルを蹴散らして勝ち残るなどという冷徹な競争の原則などが成立するのでしょうか。それ以前に外資系が圧倒的な物量で日本市場を席巻することもあり得る話です。ちなみに、正月早々日本HPが行ったサーバ全品値下げの波紋は、思った以上のインパクトを国産ベンダーに与えたようです。

 もっとも、東芝の西田厚聰社長や富士通の野副州旦社長のように、国際市場でも通用すると思える人たちが経営者になってきた現在、日本の経営風土も変わっていくチャンスなのかもしれません。

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