「クリックされないサイトに価値は宿らない」――JAL、3年半ぶりのHP刷新に託した意図大企業のWebサイト構築法(1/3 ページ)

JALが3年半ぶりにホームページを刷新した。Web経由で航空券やホテルの予約拡大を狙い、顧客ごとに情報を切り出して提供できるガジェットや自動推薦エンジンを取り入れた。Yahoo!などのポータルサイトにならったレイアウトに変更するなど、細部の作り込みにもこだわった。

» 2009年02月11日 08時30分 公開
[藤村能光,ITmedia]

 日本航空(JAL)のホームページは、月間400万人のユーザーが訪れる情報ポータルサイトだ。その10%に当たる40万人が、航空券の予約やホテルの申し込みにホームページを使う。

 2008年12月、JALは約3年半ぶりにそのホームページを全面刷新した。ホームページ経由による航空券やツアーの申し込みを増やすことが狙いだ。そのために会員/非会員を問わず、サイト内の回遊率を高める仕組みの構築を模索していた。

 同社WEB販売室の小野陽弘マネジャーは、「顧客にクリックしてもらって初めて売り上げが増える。それがホームページの価値になる」と考え、ホームページの改善を指揮した。Webサイト構築に必要な技術やトレンドがめまぐるしく移り変わる中、ガジェット自動推薦エンジンといった最新の技術を積極採用し、数年後も廃れないサイト作りを目指した。

会員/非会員の区別無く、商品の成約率を上げたい

日本航空 WEB販売室の小野陽弘マネジャー 日本航空 WEB販売室の小野陽弘マネジャー

 JALのホームページは、国内線/国際線の案内やツアーの紹介など2万以上のWebページで構成されており、顧客が必要とするあらゆる情報を盛り込んでいる。

 だが、顧客が求めるホームページの情報は千差万別だ。JAL独自のサービスを受けられる「会員」と、そうではない「非会員」――どちらの立場でホームページを閲覧しても、航空券やホテルの予約をしてもらうことで、売り上げ増につなげたい。こうしたホームページ作りを必要としていた。

「ガジェット」で1画面上に必要な情報すべてを網羅

 従来のホームページが抱えていた懸念材料を解消する手立てとして、ログインした会員に専用の「マイページ」を提供した。そこでは、ホームページ内の情報やサービスをガジェットとして用意。クリックやドラッグアンドドロップといった簡単な操作で、航空券やホテルの予約、お知らせ、空港情報などをマイページの好きな場所に配置できる。

ガジェットを採用したマイページ ガジェットを採用したマイページ(出典:日本航空)

 とはいえ、ガジェットを使ったことがないという会員は少なからず存在する。「マイページ作りを100%委ねても、自発的に使ってもらえない」(小野氏)ことを見越して、情報を配置するためのテンプレート(ひな形)を5種類用意し、最新の技術を抵抗なく使ってもらえるようにした。

 情報量が多くて複雑なホームページに顧客は集まらない。顧客の属性に応じてコンテンツや情報を切り分けて提供でき、かつマイページの1画面上に必要な情報を網羅できるガジェットなら、こうした課題を解決できると考えた。「(Webサイト構築における)新しい技術として標準になる可能性を感じた」(小野氏)ことも、採用の決め手となった。

 「航空券の予約やフライト時間の確認などで頻繁にログインする会員がいる。その顧客がより少ない手間で必要な情報にたどり着けるようにしたかった」と小野氏はガジェット採用の理由を語る。使い勝手の向上という基本の筋力をつけることで、ホームページ経由によるチケットの予約やサービスの成約率アップを目指す。

コンテンツの自動推薦でバナーの「風景化」を防ぐ

 刷新のもう一つの目玉として、マイページにログインしない非会員向けに自動推薦エンジン「Rtoaster」を、「国内線」「国際線」など各メニューのトップページに導入した。非会員の属性やホームページ上での行動履歴から、航空券の予約増につなげるコンテンツやバナー広告を自動で表示するようにした。

 非会員に対する情報の見せ方は、トップページに露出したバナー広告という「画一的なサービス」(小野氏)にとどまっていた。その結果、「最初は興味を持ってもらえるが、すぐにクリックされなくなり」(同)、バナー広告は風景と化していた。バナー広告の内容を頻繁に切り替えることも考えたが、たまにホームページを閲覧する顧客が必要とする情報を届けられるかという点で疑問が残った。

 Rtoasterは、検索キーワードや行動履歴から、ホームページの閲覧者の属性を判断し、適切なコンテンツを表示できる。IPアドレスから利用者がアクセスした場所を割り出し、チケットの入力フォーム内の「出発地」の表示を自動で変えることも可能だ。

 ホームページからの航空券の購入を増やすには、普段から購入している会員だけでなく、「一見さん」である非会員をいかに囲い込めるかが生命線になる。Rtoasterの導入により、非会員にも会員と同程度の質のコンテンツを自動で提供できるようになった。

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