Amazon EC2/S3の明細を確認すると、目立っているのはサーバ利用料と通信料でした。保存するデータ量に依存するとはいえ、ストレージ系サービスの費用は気にならない程度でした。
Amazon EC2/S3をおいしく使うためには、以下がポイントになります。
自社にサーバを導入するよりも1サーバあたりで少なくとも10万円は安いため、サーバ数が多いほどコストメリットが大きくなります。
サーバ構築期間を短縮するためには、Amazon EC2デフォルトの設定に対する差分の反映を、スクリプトで自動化するのが良いです。これでインスタンス利用時間が減るので、利用コストも削減できます。また、Amazon EC2 はインスタンス起動時が必ずデフォルト環境なので、サーバを再起動するだけで環境構築が必要、つまりサービスが止まります。それでは困るので、環境構築の自動化は必須の作業ともいえます。
スタティックコンテンツは必ずキャッシュが効くように設定して、フロントエンドの通信料を削減するのは通常のWebシステムと同様ですが、memcachedなどのキャッシュ技術を利用してDBアクセスを減らすのも、直接のコスト削減につながります。
データ転送量が比較的少なく、CPUに負荷がかかり、しかも多重実行で処理性能が求められるもの、または、ごく一部の期間にだけしかトラフィックが発生しないシステム、そのようなシステムには最適です。重要度の低いシステムにも向いています。
それは例えばこんなシステムです。
ただし、心情的な安心感のためにも、個人情報を生で扱わない工夫は必要です。ファイルやDBを暗号化しても良いですし、個人情報そのものを削除したデータを使うのも1つの手段だと思います。
連載1回目にクラウドのデメリットとして挙げた項目として挙げた項目を再掲します。
企業システムとして考えるとどの項目も無視できませんが、セキュリティを除けば工夫と割り切りでなんとかなりそうです。まずは社内システムのポートフォリオを整理し、小規模かつセキュリティ要件がそれほど高くない、かつシステムライフの終局が近いシステムを選び、クラウドのフィージビリティスタディを実施して頂くのが良いと思います。
セキュリティや信頼性のSLAがあるエンタープライズクラウドサービスがお手軽価格で登場するのも時間の問題なので(そうでないと日本のデータセンターは厳しい状況に追いやられます)、今からでも社内システムのポートフォリオを分析し、クラウド化のメリットが大きいシステムを選んでみてはいかがでしょうか。
株式会社NTTデータ 基盤システム事業本部所属。ミッションクリティカルシステム開発を経て、現在はシステム基盤のコンサルティング業務に従事。得意分野は性能評価、得意技は平易な説明と育児。
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