「Open Cloud Manifesto」は正式発表の前から失敗する運命にあるのだろうか。クラウドプラットフォームの大手3社は不参加を決めている。3月30日に同マニフェストが発表される時点で名を連ねるのは、IBM、Sun、Ciscoおよび多数の小規模企業になるようだ。
「Open Cloud Manifesto」は正式発表の前から失敗する運命にあるのだろうか。
そうではないとしても、暗雲が立ち込めているのは確かだ。クラウドプラットフォームの大手3社が不参加を決めたからである。3月30日にOpen Cloud Manifestoが発表された時点で支持企業として名を連ねるのは、IBM、Sun、Ciscoおよび多数の小規模企業になるようだ。Ciscoの支持も疑わしいという見方もある。
支持企業のリストに入っていないのはMicrosoft、Amazon、Googleだ。これら3社のうちの1社の積極的な参加が欠落しているだけでも、クラウドコンピューティングの将来のあり方を真に議論したと主張することはできないはずだ。また、独自の立場でクラウド分野をリードするSalesforce.comはどうするのだろうか。噂によると、彼らも支持企業のグループに入っていないようだ。
「GigaOM」サイトが3月27日に報じたが、Googleはマニフェストの支持グループに加わらない。
GigaOMのステーシー・ヒギンボーサム氏は次のように記している。
「Googleの広報担当のジョン・マーチンソン氏は、わたしへの電子メールで次のように述べている――“われわれはマニフェストには参画しないが、Googleはコンシューマーと企業に大きなメリットをもたらすクラウドコンピューティングの強力な推進者である。われわれはインターネットを通じてソフトウェアとサービスの提供を促進、改善するための業界の対話を重視するとともに、この面でのIBMのリーダーシップとコミットメントを評価している。われわれは今後も、すべてのベンダーおよびあらゆるデータとの相互運用性に対してオープンであり続ける”」
マニフェストの作成に協力したルーベン・コーエン氏(Enomalyの創業者で同社のチーフテクノロジスト)は、3月29日付のブログ記事の中で、「Cloud Computing Interoperability Forum(CCIF)はマニフェストに署名しない」と述べている。
自身を“CCIFの扇動者”と呼ぶコーエン氏は、次のように語る。
「このため、3月30日にOpen Cloud Manifestoが正式にリリースされた時点では、調印組織としてCCIFの名前は見当たらないだろう。これは苦渋の決断である。というのも、われわれはこのドキュメントの内容および真にオープンなクラウドというその原則を全面的に支持しているからだ。しかしCCIFではオープン性と公正なプロセスという方針を明確に打ち出しているため、われわれは誠意を持ってこのドキュメントを支持することはできない」
一方、Amazon.comはeWEEKなどプレス各社に送った声明文で、同社はOpen Cloud Manifestoに参加しないことを明らかにした。
Open Cloud Manifestoそのものについては、同ドキュメントの中で次のように説明されている。
「これらの基本原則は、クラウドはほかのIT技術と同様にオープンであるべきだという信念に基づくものである。このドキュメントは、クラウドコンピューティングの最終分類を規定したり、新たな標準化の取り組みを承認したりするのを目的としたものではない。また、クラウドのアーキテクチャとデザインに関する包括的な理論を示すことが目的でもない。このドキュメントは、クラウドコンピューティングを利用するとともに、クラウドプロバイダーに対して基本原則を確立したいと考えているCIO(最高情報責任者)、政府、ITユーザー、企業経営者のために作成されたものだ。クラウドコンピューティングはまだ初期段階にあり、今後学ぶべきことや実験すべきことはたくさんある。しかし今こそ、出現しつつあるクラウドコンピューティングコミュニティーのメンバーがオープンなクラウドという考え方の下に結集するときだ」
Microsoftのスティーブン・マーティン氏は3月26日付のブログ記事で、Open Cloud Manifestoは偏っているとして、マニフェストをめぐる状況に苛立ちを示している。
マーティン氏がeWEEKの取材で語ったところによると、MicrosoftがOpen Cloud Manifestoに反対しているのは、手続き上の問題があるからだという。また、この取り組みの方針を誰が決定するのか、クラウドコンピューティング標準を管理するプロセスはどうするのか、といったガバナンスの問題について何も述べられていないのも問題だとしている。
「誰がこの取り組みを管理し、標準への準拠を判定するのだろうか」とマーティン氏は問い掛ける。「それがIBMだとすれば、われわれは重大な懸念を抱かざるを得ない」
これは皮肉な話である。なぜならクラウド技術の普及を促したWebサービス規格の多くは、IBMとMicrosoftが共同で作成したものであるからだ。
しかし、議論はまだ始まったばかりである。3月30日から4月1日にニューヨークで「Cloud Computing Expo」が開催されるほか、4月2日には、やはりニューヨークでCCIF主催の「Wall Street Cloud Computing Interoperability Forum」が開かれる。
マーティン氏によると、Microsoftはクラウドの将来に関する対話を持つことに関心があるという。
さらにマーティン氏は3月29日、ブログ記事で次のように述べている。
「われわれは先週、開発者、標準化組織のメンバーおよびベンダーらと、クラウドコンピューティングのオープンな標準およびそれを共同で実現する方法について話し合った。長い間この業界に身を置いているわたしは、新しい技術やプラットフォームが標準と相互運用性への関心を喚起しなかった時期を覚えている。今回、クラウドのオープン性および相互運用性へのアプローチの透明性が広範に支持されていることが分かったのは、素晴らしいことだった。また、さまざまなコミュニティー主導型の取り組みが活発化しているのを知ってうれしく思った。これらの取り組みは、望ましい最終状態を規定する上で極めて貴重なフィードバックを提供することだろう。誰もが一歩後ろに下がり、こういった取り組みの中心になるのはベンダーではなく、開発者とエンドユーザーなのだということを再確認することが重要だ」
「3月25日の夜の記事でも書いたように、Microsoftはクラウド標準をめぐるオープンな対話の機会を歓迎する。このため、ニューヨークで行われるCloud Computing Expoにおいて、ほかのベンダーおよび標準化組織のメンバーと3月30日午後4時に会うという招待を受け入れたのだ。われわれの視点から見れば、これは対話の新たなスタートだ――共同の“仕切り直し”といってもいい」
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