ローソンの業務改革を支える次世代システム「ローソン3.0」とは情報分析力を武器に(1/2 ページ)

コンビニエンスストア業界で第2位のローソンは、従来の店舗システムを大幅に見直し、次世代ITシステムへの刷新と新業務改革に取り組んでいる。それを急進しているのが、2年前に同社のCIOに就任した横溝陽一氏だ。

» 2009年05月25日 20時03分 公開
[富永康信(ロビンソン),ITmedia]

1日に900万人が利用するローソン

 アメリカ・オハイオ州に住むJ.J.ローソン氏が1939年に開店した牛乳販売店(Lawson's)は、そのおいしさが評判となり大いに繁盛したという。その社名とミルク缶のトレードマークを引き継ぎ、1975年6月に大阪府豊中市に日本での第1号店を開店したローソンは、現在コンビニエンスストアの「ローソン」を始めとして、「ナチュラルローソン」、「ローソンストア100」、「ローソンプラス」(ローソンの生鮮強化型ハイブリッド店)など客層に合わせたフォーマットを活用し、地域のニーズに合せた出店・改装を推進しつつある。

 2009年2月28日現在、ローソン・ナチュラルローソン合せて約8602店舗、昨年9月に連結子会社になった九九プラスの「ローソンストア100」「SHOP99」を含めると47都道府県で9527店舗となり、1日平均800〜900万人の顧客に利用されている。

 3月末に予定していた「am/pm」を展開するエーエム・ピーエム・ジャパンの全株式および債権の譲渡契約は頓挫した形となったが、CSV各社とも既存店売上高が好調に推移するとともに、taspo(たばこ自動販売機用の成人識別ICカード)の稼働開始に伴う来店客数の増加やATMの手数料収入の増加などが増え、2009年2月期の営業収入は3494億7600万円(前年同期比16%増)、営業利益が491億円(前期比105.5%増)となった。

 また、マイローソンポイントやローソンパス(Lパス)という独自のロイヤリティマーケティングが浸透。カード会員の利用率は売上ベースで14%となっている。

データは主観的ではなく客観的に活用すべき

「業界でトップクラスの企業がそうであるように、ローソンも情報分析力を武器とする企業を目指す」と語るローソンCIOの横溝陽一氏

 ローソンには、POSデータの購買履歴や会員の特性データなどが豊富に存在し、コンビニ業界では代表取締役社長CEOである新浪剛史氏が次々に打ち出す事業戦略でイノベーションリーダーのイメージが強いが、目下の課題は、2000年頃からを境に出店数の伸びの鈍化に伴い売上も鈍化傾向にあることだ。

 しかし、情報の分析力を駆使することで売り上げ、利益とも伸びる可能性は大きいと語るのはローソンの常務執行役員CIOでITステーションのディレクターを務める横溝陽一氏だ。2009年5月14日に開催された「第14回データウェアハウス&CRM EXPO」の基調講演で、ローソンの次世代ITシステムと業務改革を解説した同氏は、「日々集まる膨大なデータを利用しきれているかといえば、まだまだ取り組むべき余地はある」としながらも、今後もIT強化による業務改革を推し進める意志を示す。

 三菱商事出身でi2テクノロジーズ・ジャパンの社長も務め、2年前にローソンのCIOに着任した横溝氏は、それまで「PRiSM」と呼ばれていた店舗システムを再定義し、次世代の本部系システムと店舗系システムを「ローソン3.0」と名付け、それを使った業務改革をPRiSMとした。

 情報分析力を武器とする企業を目指すという横溝氏は「コンビニには日々膨大なデータが集まってくる。それを見える化して科学的かつ客観的に情報を活用していく」と説明。多くの企業は自社の業務を正当化するため情報を主観的に利用しているが、ローソンはフランチャイズビジネスのため、蓄積する膨大な情報を科学的なデータに加工し、客観的次のアクションに結びつけることで、顧客はもちろん、フランチャイズオーナーや社員、クルーからも選ばれるローソンになるのだという。

 この、“情報分析力を武器とする”と選ばれるローソン"に横溝氏は何度もこだわる。

目指すは廃棄ロスと販売機会ロスの撲滅

ローソンの次世代ITシステム「ローソン3.0」の全体図

 PRiSMによる業務改革とは、店舗と本部の双方が従来のやり方や常識を否定し、顧客基点の発注と品揃えをするためにイニシアティブをとり、商品の廃棄ロスと販売機会ロスの2大ロスの削減を目指すこと。それを支えるIT基盤がローソン3.0となる。また、現状の縦割り組織を情報を軸にして横串を通すかが課題だという。そのため、10年来使用してきたLotus Notes/Dominoを捨て、ユニファイドコミュニケーション型のソリューションで本部の情報基盤を再構築した。

 そして、それらの要となるが、本部集約型の情報分析機能を担う「インテリジェンス・コンピテンシー・センター」(ICC)である。ローソンには、本部と7支社に1000人のスパーバイザー(SV)を抱え、8600の店舗で12万5000人のクルーが働き、800万人のカード会員が関わっている。また、物流部門としては53カ所のチルドディストリビューションセンター(CDC;主に弁当や総菜を担当)と27カ所のドライディストリビューションセンター(DDC;菓子や日用品など)、38カ所のフローズンディストリビューションセンター(FDC;アイスクリーム等)が稼働し、1200社の取引先から商品を調達するなど、非常に精緻な仕組みを構成している。

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