破竹の勢いを見せるワイヤレスブロードバンド市場アナリストの視点(1/2 ページ)

2009年はWiMAXや次世代PHS関連のサービスが相次いで登場するなど、ワイヤレスブロードバンドサービスが破竹の勢いを見せている。今後、同市場はどのように拡大するのか。「移動体通信」「定額制データ通信」「公衆無線LAN」「MVNO」という4つのサービス分野を取り上げ、分析する。

» 2009年06月26日 08時00分 公開
[中原隆治(富士キメラ総研),ITmedia]

 2月26日、UQコミュニケーションズがWiMAXのデータ通信サービス「UQ WiMAX」を開始した。現在は試用期間であるが、7月以降は有償サービスとして提供される予定だ。ウィルコムは9月30日まで、東京の一部の地域で次世代PHSサービス「WILLCOM CORE XGP」を展開している。そのほか、携帯電話では3Gサービスを発展させた「LTE(Long Term Evolution)」(通称3.9G)システムを活用したサービスが2010年度にも開始される予定であり、MVNO(仮想移動体通信事業者)によるサービスが相次いで市場に登場している。

 ワイヤレスブロードバンドサービスはコンシューマー市場およびビジネス市場において活用が進み、いずれも市場の拡大が期待されている分野である。ワイヤレスブロードバンド市場が今後どのような成長を遂げるかについて、市場規模の分析を基に明らかにする。

移動体通信サービス市場の概況

 2008年度の移動体通信(モバイル)サービス(携帯電話PHSMVNO*/WiMAXサービス)の市場規模は7兆1645億円で、モバイルサービスの契約数は1億1200万を突破した。市場の大部分を占める携帯電話サービスは契約数の増加ペースが年々鈍化し、ARPU(月間電気通信事業収入)の減少も続く見通しだ。

*MVNOはダブルカウント

 一方MVNOサービスは、WiMAXや次世代PHS関連のサービスの開始に伴い、拡大が見込まれている。市場規模は、ほぼ横ばいから微増で推移していくとみられる。

移動体通信サービス市場規模推移 図1:移動体通信サービス市場規模推移(出典:富士キメラ総研2009 ワイヤレスブロードバンド市場の現状と将来展望』)

定額制データ通信サービスの躍進

 ワイヤレスブロードバンド市場で拡大が期待される分野は、定額制データ通信サービス市場だ。ノートPCにデータ通信端末を外付けする利用方法が一般的になっており、利用者層は主にビジネス関連のコンシューマーや法人である。そのためサービスを契約するのは、特定の利用者に限られていた。

 2007年3月にイー・モバイルが同市場に参入したことで、利用者のすそ野が広がっている。最近よく見かけるNetbookとイー・モバイルの定額制データ通信サービスのセット販売が好調で、これまでノートPCをモバイル環境で利用していなかった新規ユーザーの獲得に成功した。

 定額制データ通信サービスの契約数は、2008年度は約287万だったが、2013年には773万まで拡大すると見込まれる。契約の急拡大の要因は、各事業者でサービスの値下げ競争が続くことや、多様な端末が登場することに加え、固定ブロードバンド回線の代わりとしての利用、伝送速度の向上、ブロードバンドアプリケーションの利用拡大などが挙がる。

 新規需要を掘り起こす要素として重要なのが、「端末」と「アプリケーション」である。

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