SIerが進むべきクラウドビジネスの方向性Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2009年08月03日 05時36分 公開
[松岡功ITmedia]
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SIerが進むべき「アグリゲーター」への道

 さて、このクラウドサービス。ITベンダーとしては期待が膨らむばかりのビジネスだが、顧客におけるITリソースの「所有」から「利用」へのパラダイムシフトにとりわけ気を揉んでいるのは、これまで顧客のシステムを構築してきたシステムインテグレーター(以下、SIer)だ。

 さらにいえば、SIerが数多く抱えるシステムエンジニア(SE)の仕事が、これからどう変わっていくのか。というより、どう変えていかなければいけないのか。この問題は今後、IT業界全体に重くのしかかってくるだろう。

 そこで、SIerがこれから進むべきクラウドビジネスの方向性を考えるうえで、1年余り前に本コラムで紹介したビジネスコンサルティング会社、シグマクシスの倉重英樹CEOの話にあらためて注目したい。

 まずは、倉重氏が語ったIT業界の構造変化の図をご覧いただきたい。図の右側にある「テクノロジー」(IT)を左側にある顧客企業の「ビジネス」に向けて、IT業界がどのような仕組みで提供しているのか、というのが基本的な構図だ。そして、その現状を示したのが下の図、今後を示したのが上の図である。

 現状を示した下の図では、テクノロジー側に最も近いコンピュータメーカーが顧客企業の情報システム(IS)部門を通じて、テクノロジーをビジネス側に提供する流れが軸となっている。それにSIerやテクノロジーコンポーネントベンダー、コンサルティング会社が、図のような位置付けで関わっている。

 それに対し、今後の姿を示した上の図は、ビジネスとテクノロジーの両面において顧客企業が要望することをすべて取り揃える役目を担う「アグリゲーター」、および両面においてアウトソーシングを行う「アウトソーサー」が中心となる。そしてビジネス、テクノロジーそれぞれのコンポーネントベンダーが、アグリゲーターとアウトソーサーを支えるという構図だ。ちなみにビジネスコンポーネントとは、アプリケーション、コンサルティング、リレーションシップといった類のものを指すという。

倉重氏が語ったIT業界の構造変化(シグマクシス資料より作成)

 倉重氏は当時の記者会見で、「いまIT業界の構造は、下の図から上の図へと移行しつつある。シグマクシスはアグリゲーターとしての役割を果たしていきたい」と語った。その後、同社はまさしくアグリゲーターとして注目を集めているが、このアグリゲーターこそ、SIerにとってもこれから進むべき方向ではないだろうか。

 「ビジネスとテクノロジーの両面において顧客企業が要望することをすべて取り揃える役目を担う」というアグリゲーターの説明は、少々抽象的ではあるが、顧客起点で考えれば、いろいろと取り組まなければならないことが思い浮かんでくるのではなかろうか。

 今後、アグリゲーターという言葉が定着するかどうかは分からないが、いずれにしてもSIerにとっては、これまでにも増して顧客のビジネスを把握することが求められるのは必至。アグリゲーターとしてやるべきことはたくさんありそうだ。

プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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