3カ年計画で事務システムの刷新を成し遂げた大和証券の鈴木常務は「対処療法ではないゴールを設定し、実現すること」が情報システム部門に必要だという。
9月25日に開催された仮想化ソリューションセミナーで基調講演を務めた大和証券の鈴木孝一常務は、IT基盤刷新に必要な心構えとして「目先にとらわれず、次元の違う目標を掲げること」を挙げ、自身が成し遂げた改革の経験を語った。
鈴木氏は情報システム部門が陥りがちな状況を、「アキレスと亀(俊足のアキレスが亀を追いかけても、追いついた時点で亀はさらにその一歩先を行くので、追い越せないというパラドックス)」に例える。システムの改善を繰り返したとしても、それが現場の不満を解消するための対処療法にとどまる限り、真のゴールには至らない。「セカンドユーザーには安心感はあるが、前を行く人の背中しか見えない。リスクを負い、真のゴールを目指すべき」(鈴木氏)
真のゴールに至るためには、ビジネスに柔軟な組織作りが必要だという。具体的には、既存の事務部門の業務にITをひも付けた「従来型事務処理組織」ではなく、システムの視点から効率的な業務を行える「IT型事務処理組織」への脱却である。前者は部分最適であり、後者は全体最適だといえる。
「ビジネスに柔軟なシステム」におけるサービスはどのようなものか? 鈴木氏は機能と中身に分離して考えるべき」と話し、それを回転寿司に例え説明する。つまり「ベルトコンベアー+皿」が機能で、寿司が中身(ニーズ)だということになる。
ビジネス部門の多様なニーズに対し共通で役割を果たせる「ベルトコンベアー+皿」の部分を、情報システム部門が主導権を持ちIT化することで、その上を「ニーズという寿司ネタ」がスムーズに流れることになる。この考え方に従い大和証券では、従来複数の事務要員の手を経て実施していた交通費生産処理を改革(事務レス交通費生産システム)。今では(Suicaなどの)ICカードの乗車記録を端末で読み込みワークフロー処理することで、領収書という現物や紙の処理伝票の発生を完全に抑制し、事務負荷が削減されたという。また職員の端末はシンクライアント化し、リソースにはサーバの余力を利用。同時にデータセンターへの処理履歴の集約も図られた。
「目先のカスタマイズや例外処理に捉われすぎると、目的を見失う」と鈴木氏は警告する。ビジネス側とのコミュニケーションを密にし、ビジネス側、情報システム側ともにリスクを取り合う関係を構築することで、情報システムの改革は成功するのだという。
「無理だと思ったシステム改革を必ず成し遂げる。これを通じて、ITの凄さを実感できる。ニーズを持ち続けること、これが無限のゴールを生む」(鈴木氏)
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