ITサービス会社 争奪戦の背景と行方Weekly Memo(1/2 ページ)

Xeroxが先週、Dellが先々週、相次いでITサービス会社の買収に乗り出した。こうした動きの背景を探ってみると、注目されるITベンダーの提携関係も見えてきそうだ。

» 2009年10月05日 07時00分 公開
[松岡功ITmedia]

プライベートクラウドをめぐるバトルが激化

 このところ、米国でハードウェアベンダーがITサービス会社を買収する動きが相次いでいる。9月28日には米Xeroxが米Affiliated Computer Services(ACS)を64億ドルで、同21日にはDellが米Perot Systemsを39億ドルで買収すると発表した。

 ACSとPerot Systemsは、いずれもITシステムの構築・導入から運用管理、それらを一括して請け負うアウトソーシングまで手掛けるITサービスの大手である。

 年間売上高は、ACSが約65億ドル、Perot Systemsが約28億ドル。両社とも2009年4-6月の四半期でそれぞれ9750万ドル、3100万ドルの純利益を上げており、経済情勢が厳しいながらも堅実な業績を記録している。

 XeroxとDellがそうしたITサービス会社の買収に相次いで乗り出したのは、ハードウェア、ソフトウェア、ITサービスを一層深く連携させることでアウトソーシング事業を強化し、さらにはその延長線上にあるクラウドコンピューティング時代をにらんだ事業体制を構築する狙いがある。

 ハードウェアベンダーによるITサービス会社の買収をめぐっては、2008年8月に米Hewlett-Packard(HP)が米Electronic Data Systems(EDS)を139億ドルで買収し、注目を集めた。HPはさらに今年9月23日にはEDSのブランドを廃止し、EDS部門を「HP Euterprise Services」に変更すると発表した。

 HPはEDSを傘下に収めたことで、アウトソーシングや「プライベートクラウド」と呼ばれる企業向けクラウドコンピューティング事業で先行する米IBMに対抗する体制を構築した。今回、ITサービス会社の買収に乗り出したXeroxとDellも、このバトルに参戦した格好だ。

ITサービス大手Perot Systemsの買収に乗り出したDellのマイケル・デルCEO

 さらに、Xeroxは世界の事務機市場で、キヤノン、リコーの日本勢と長年、激しいバトルを繰り広げてきたいきさつがある。

 そのキヤノンが9月14日、HPと事務機分野で提携強化することを発表した。HPがキヤノンから複合機の供給を受け、サーバなどを組み合わせてシステムを構築し、各種サービスも合わせて両社で欧米の大手企業に売り込む構えだ。

 また、リコーも2009年春からIBMとグローバル市場を対象に、事務機を核としたシステム分野で連携を強化している。

 そうした背景から、今回のXeroxによるACSの買収は、キヤノン・HP連合、リコー・IBM連合との今後のバトルをにらんだものともいえそうだ。

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