ITサービス会社 争奪戦の背景と行方Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2009年10月05日 07時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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ITサービスがOracleと富士通の関係強化の鍵に?

 ITベンダーの事業分野を、ハードウェア、ソフトウェア、ITサービス、ネットサービスに大別すると、クラウドコンピューティング時代に向けてはそれぞれのアプローチの仕方があるとともに、得意分野を補い合ったM&A(合併・買収)や協業によって一層激しい勢力争いが繰り広げられることになりそうだ。

 そうした勢力争いにおいて、とくに今後の成長分野と目されるプライベートクラウド市場で有利な戦いを進める決め手になるとみられるのは、顧客企業との継続的な関係、つまりは「顧客の囲い込み」を図ることだ。

 その最も有効な技術およびサービスが、プライベートクラウド実現のステップとなるアウトソーシングである。資金の豊富なハードウェアベンダーが相次いで有力なITサービス会社の買収に乗り出した最大の眼目は、そこにある。

 ではこうしたグローバルな勢力争いに、日本の有力なITベンダーはどのように参戦するのか。注目されるのは今年4月、米Sun Microsystemsの買収を発表した米Oracleと、Sunと密接なつながりを持つ富士通との関係だ。

 OracleによるSunの買収については現在、欧州委員会がその内容を調査している段階だが、承認されればソフトウェアベンダーがハードウェアベンダーを傘下に収める格好となる。

 だが、今後プライベートクラウド市場でIBMやHPと戦っていくことを考えると、ITサービスの強化が不可欠になりそうだ。Oracleはその点、ソフトウェアベンダーとして数多くのITサービス会社と協業しているが、より強力で緊密なパートナーが必要となる可能性もある。

 そう考えると、富士通は有力なITサービス会社でもある。そうしたOracleと富士通の今後のパートナー関係を想定するかのような動きが先ごろあった。

 日本オラクルと富士通が9月16日、運用管理ソフトの連携検証を共同で実施したと発表したのがそれだ。その内容は、両社の運用管理ソフトを連携させ、ハードウェアからアプリケーションまで一貫した統合運用管理が可能かを検証したものだ。

 今後、Oracleと富士通の関係が深まるとすれば、これまで富士通が担ってきたSunのハードウェアの生産・販売もさることながら、ITサービスが大きな鍵を握っているかもしれない。

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プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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