エリソンCEO、「クラウドレディ」のFusion Applicationsを2010年に提供へOracle OpenWorld 2009 Report

最終日のラリー・エリソンが毎年発表するサプライズは、従来のアプリケーションとは別に「明日」を見据えた新製品としてFusion Applications Version 1を2010年にリリースすることだった。ゲストにはアーノルド・シュワルツェネッガー氏が登場した。

» 2009年10月15日 11時39分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 米サンフランシスコでOracleが開催している年次ユーザーカンファレンス「Oracle OpenWorld 2009 San Francisco」の最終日、焦点となっていたラリー・エリソンCEOによる基調講演で、E-Business Suite(EBS)などの既存の製品ラインとは別に、次世代アプリケーションの柱となる新たなアプリケーションスイート「Fusion Applications」を提供すると発表した。「Version 1」を2010年に投入する。クラウドコンピューティング形式での提供も予定している。

「既存のアプリケーションを今後も開発するApplication Unlimitedも継続する」と話すエリソンCEO

 最終日まで引っ張った末にエリソンCEOが懐から差し出したのはFusion Applicationsだった。E-Business SuiteやPeopleSoft、JDEdwardsなど既存のアプリケーション製品の開発を継続するApplication Unlimitedを「次の10年も続ける」と話す一方で、新規にリプレースするための次世代アプリケーションスイートとして開発しているFusion Applicationsを提供する。

 これにより、Oracle製品へのユーザーの選択肢は、1.既存のアプリケーションを継続して使い続ける、2.Fusion Middleware上で既存のアプリケーションとSAPなどを含めた他のアプリケーションを組み合わせて使う、3.2010年に登場するFusion Applicationsを新規に導入するか、載せ換えるという3つになった。

 この日発表したFusion Applicationsの特徴は、Javaベースの基盤であるFusion Middlewareを利用することで、完全に標準ベースのアプリケーションに仕上がることだ。 

 「EBS、PeopleSoft、JDEdwardsもSAPも、どれもカスタムメイドのミドルウェアが基盤になっていた」(エリソン氏)

「Business Intelligence Embedded in Transactions」(トランザクションに組み込まれたBI)

 加えて、Fusion Applicationsでは、ユーザーインタフェース(UI)としてビジネスインテリジェンス(BI)を採用していることが挙げられる。通常業務を営むためのトランザクションデータをBI上に組み込み、それをUIとして実装するため、必然的にビジュアル性の高い操作感になりそうだ。

 この日エリソン氏は、Fusion ApplicationsのVersion 1を構成するモジュールを発表した。具体的には、タレントマネジメントと呼ぶ人事系の機能を提供する「Human Capital Management」、「Financial Management」「Sales and Marketing」「Supply Chain Management」「Project Portfolio Management」「Procurment Management」「Governance、Risk and Comliance」という7つだ。

 OracleはSunのハードウェアを活用し、OLTPにも対応するExadata 2を出すだけでなく、既にリリースしていたFusion Middleware 11gによって、アプリケーションを支えるミドルウェア部分を固めていた。虎の子のスイートとして、Fusion Applicationsを投入するというシナリオは想像に難くないものだった。既にVersion 1の開発は終了し、現在はテストの段階に入っているという。話題は、2010年に本当にリリースされるのかといった方向に移りそうだ。

サポートの新体系を発表

 エリソンCEOは同じ基調講演で、サポートの新体系「My Oracle Support plus Enterprise Manager」も発表した。

 これは、顧客企業のOS、データベース、ミドルウェア、アプリケーションなどの情報システムを管理するアプリケーションである「Enterprise Manager」を軸に、Oracle側のサポート要員がEnterprise Managerからさまざまな情報をオンラインで受け取り、サポートするものだ。パフォーマンスの問題の発生やパッチを実装する必要性の有無などを判断し、的確なサポートの提供を目指すもの。

 エリソン氏はこの中で、「顧客企業のシステム構成情報などをOracleがなるべく多く収集し、分析することで、問題の発生を事前に察知できるようにしたい」と話した。Oracleが顧客のシステム構成を正しくつかんでいれば、パッチを当てるタイミングやバグ発生の予測などがしやすくなる。

 こうしたサービスをオンラインで提供することは、クラウド形式でのソフトウェア提供も視野に入れているFusion Applicationsとも親和性が高いといえそうだ。

知事も歓迎する合併

アーノルド・シュワルツェネッガー氏

 サプライズゲストがあった。カリフォルニア州知事のアーノルド・シュワルツェネッガー氏だ。自ら出演した映画『ターミネーター』シリーズなどを引き合いに出し、「とにかく“Tech”が付くものは何でも好き」と切り出した同氏は、ハイテクの世界的な発祥地であるカリフォルニア州のシリコンバレーに触れた。

 「小さなガレージから始まった歴史の中でも象徴的な2社、OracleとSun Microsystemsが統合することを賞賛したい」と述べ、場内の大きな拍手を集めた。その来場者へのメッセージは「このイベントが終わっても家に帰らないでください。カリフォルニアを旅してお金を置いていってください」。幾度となく笑いを誘っていた。

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