「有効性」を重視する企業が経営で沈まない理由Gartner Column(2/4 ページ)

» 2009年11月06日 11時30分 公開
[小西一有(ガートナー ジャパン),ITmedia]

ビジネス面での優先事項を解決できる

 「Gartner CIO アンケート調査 2009」では、エンタープライズ・エフェクティブネスの設問を顧客ごとに集計して点数を付け、点数の高い順に「リーダー層」「チャレンジャ層」「上位フォロワー層」「下位フォロワー層」と4つのレベルに分類しました(表1)。

エンタープライズ・エフェクティブネスが影響するIT組織の要素 (表1)エンタープライズ・エフェクティブネスが影響するIT組織の要素(出典:ガートナー)

この層ごとにほかの設問結果と比べると、次のような結果が得られました。

  • エンタープライズ・エフェクティブネスが高い順に、CIOが、CEO(最高経営責任者)に対してレポーティングをする割合が高い。
  • エンタープライズ・エフェクティブネスが高い企業は、IT予算をビジネスの成長や変革に使う割合が高い。

 同調査で、CIOに「ビジネス面での優先事項」を聞いた時に、この課題を翌年中に解決できる自信があるかということも、同時に尋ねました。その結果が(表2)です。エンタープライズ・エフェクティブネスが高い企業ほど、自信を持っている程度が高くなります。自信に差が出るのは、景気低迷期に見られる共通の特徴です(景気がいいときは、エンタープライズ・エフェクティブネスに関係なく、みなさまが根拠なき自信を持ちます)。

エンタープライズ・エフェクティブネスがCIOの自信に影響する (表2)エンタープライズ・エフェクティブネスがCIOの自信に影響する(出典:ガートナー)

 エンタープライズ・エフェクティブネスのレベルにより、「ビジネス面での優先事項」や「CIOの戦略」にも大きな影響を及ぼします。

 「ビジネス面での優先事項」をレベルごとにクロス集計した結果が(表3)です。リーダー層では、「新商品やサービスを開発する(イノベーション)」が3位です。この項目は「企業の外側にいる顧客への働き掛け」であり、1、2位の「企業内部への働き掛け」とは対照的な取り組みです。企業の競争優位の源泉を生み出すこととも言い換えられます。不況の中でも、常に時代の先を行こうとするリーダー層の意気込みが見受けられます。

CIOの優先課題の文脈を設定するエンタープライズ・エフェクティブネス (表3)CIOの優先課題の文脈を設定するエンタープライズ・エフェクティブネス(出典:ガートナー)

 イノベーションの項目は、チャレンジャ層では5位、上位フォロワー層では7位、下位フォロワーでは8位です。エンタープライズ・エフェクティブネスが低くなるほど、顧客に目が向かなくなり、他社との競争優位を考えなくなってしまうのです。

 一方で、リーダー層の5位である「要員の業務効率を改善する」という項目は、ほかの層では3位です。これは企業内部への働き掛けであり、リストラ(従業員の解雇)につながるものです。

 ビジネス面での優先度がビジネス部門からの期待の表れとするならば、エンタープライズ・エフェクティブネスの高い企業は、ビジネス部門が顧客へのサービス、商品のソリューションや規模を向上するために、ITを積極的に活用しているのです。エンタープライズ・エフェクティブネスの低い企業は、IT部門にテクノロジーやサービスの提供のみを期待している点を見れば、対照的であるのが分かります。

 ビジネス部門がCIOやIT部門に期待する優先課題が、エンタープライズ・エフェクティブネスによって異なるという結果からは、IT部門が戦略的な価値を生み出せる能力を持っているか否かという判断ができます。つまり、IT部門に能力がなければエンタープライズ・エフェクティブネスのレベルは高くないし、その逆も然りです。

 エンタープライズ・エフェクティブネスを高める第一歩は、IT部門が戦略的な価値を生み出せるように、CIOがその能力を育成していかなければならないのです。

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