Dellのクラウド事業はここが違う――日本法人社長が力説Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2009年11月24日 08時54分 公開
[松岡功ITmedia]
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モジュラー型サービスで「選択肢」を提供

 「具体的には、2008年来、米国で展開しているモジュラー型のサービスを、今後グローバルに展開していく。日本においても2010年後半をめどに提供開始したいと考えている」

 メリット社長はこう語って、Dellの新たな事業展開を披露した。米国本社のサイトを確認してみると、メリット社長がいうモジュラー型のサービスとは、Dell Global Servicesの中にある「Dell ProManage」を指しているとみられる。

 その内容は、ITインフラの運用・管理をはじめ、データのバックアップやソフトウェアの集中管理・更新、クライアント管理など多岐にわたっており、それらを必要に応じて適用できる仕組みとなっている。こうしたモジュラー型のサービスとして、今後も構成部品を増強していく構えのようだ。

 では、競合他社との差異化ポイントはどこか。プライベートクラウド向けのサービスプロバイダーとなれば、IBMやHPと真っ向から戦うことになる。この点について、メリット社長はこう力を込めて答えた。

 「IBMやHPといった競合他社との大きな違いは、モジュラー型のサービスを提供するというアプローチにある。ユーザーからすると、プライベートクラウドを構築していくうえで、サービスメニューから必要なものを選択して利用することができる。これによって、ユーザーニーズに合った効率の良い仕組みを最適なコストで実現できる」

 プライベートクラウドは従来のアウトソーシングとしての要素が強く、もともとアウトソーシングに力を入れてきたIBMやHPにとっては、いわば延長線上の事業だ。それに対しDellは、アウトソーシングとは一線を画して、クラウドサービスの「部品屋」に徹するといったところか。ITインフラの器となるデータセンターも1つの部品という発想のようだ。

 ただ、Dellは9月に、アウトソーシング事業で実績を持つ米Perot Systemsの買収に乗り出していることから、そのノウハウを生かしてアウトソーシングの要素もサービスメニューに盛り込んでいくと思われる。

 とはいえ、Dellのクラウド事業に向けた基本的なスタンスは、今後もITインフラにかかわるところが中心になるだろうし、そこが強みであることに変わりはない。冒頭で紹介した宿敵同士のMicrosoftおよびSalesforce.comと、それぞれ緊密な関係を築いているのもDellならではのユニークなところだ。

 クラウド同士の相互運用性が不透明な中、クラウド事業は新たな顧客囲い込み競争との見方もある。そうした中で、モジュラー型のサービスで「選択肢」を第一義に掲げたDellの戦略が、果たしてユーザーにどの程度受け入れられるか。その動向は、今後のクラウドのありようを示す映し鏡ともいえそうだ。

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プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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