News Corp.がGoogleに宣戦布告――その背景Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2009年12月07日 09時46分 公開
[松岡功ITmedia]
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有料のビジネス領域の創出・拡大がカギ

 さて、News Corp.、Google、Microsoftといったメジャープレーヤーによる直近の動きを紹介してきたが、本質的なテーマは「ネットにある情報は無料」という意識が広がった中で、はたしてネット記事閲覧の有料化が可能なのか、さらに新聞の電子版をビジネスとしてどう成立させるか、にある。

 先述したように、米国の新聞業界ではネット記事閲覧を有料化する動きが強まりつつある。各社が使える共通の課金システムが年内にも稼働する見通しで、多くの社が参加を検討している。

 また、GoogleやMicrosoftなどもそれぞれ個別の課金システムを提案。とくにGoogleはNews Corp.の宣戦布告にみられるように、これまで記事の無料提供をめぐってメディアとは緊張関係にあったが、今度は新聞業界の再生もビジネスにする動きを始めている。

 とはいえ、これまで多くの新聞社が電子版を無料として、広告で収入を得る戦略を取ってきた。新聞社が草創期のGoogleやYahoo!の検索サービスに記事を無料提供してきたのも、ネット広告収入の伸びを見込んでいたからだ。しかし、新聞広告と比べて単価が安く、出稿量も当初の目論見とは大きく異なり、ビジネスとしては不十分なことが明らかになった。

 私見だが、ネット検索サービスへの記事配信は、ネット企業からの対価にせよ、読者への課金にせよ、当初から有料にしておくべきだったと考える。新聞社にとって記事の配信は、まさしく商品の販売なのだから。

 だが、過去を振り返ってばかりいても仕方がない。活路を見出している例もあるので、ぜひ参考にしたいところだ。その例とは、1996年に電子版を開始した当初から有料サイトとして運営しているWSJと、2002年に有料化した英紙Financial Times(FT)である。

 WSJは電子版の開始当初の年間購読料を、紙の3分の1以下に設定し、紙の定期購読者には電子版をさらに安く併読できるようにした。その後、電子版料金を徐々に値上げする一方で、紙の料金を値下げし、併読料金に一層の割安感を持たせている。また、FTは読者を無料一般、無料登録会員、有料会員に分け、有料のみならず無料登録会員の確保に力を入れて、ターゲットを絞った広告を配信する仕組みを収益につなげている。

 こうした紙とネットの組み合わせや読者の区分けなどによるビジネスモデルの構築とともに、情報の質を一層向上させて、ネット時代の新聞ブランドをどう新たに構築していくか。その上で単に無料を有料に変えるのではなく、有料のビジネス領域をどう創出し拡大していくか、ポイントはそこにあるといえそうだ。

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プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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