動き出した自治体クラウド市場Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2010年01月18日 09時07分 公開
[松岡功ITmedia]
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生かしたい自治体発サービスの芽

 自治体クラウドについては、総務省が地方自治体の業務システムの効率化施策の1つとして、今年度の補正予算20億円を充て、2009年10月から今年3月まで実証事業を進めている。4月以降は実証事業の結果を踏まえて実運用への切り替えを図っていく予定だ。

 実証事業の狙いは、地方自治体に共通する業務について、業務システムを複数の市区町村で共同利用できるようにすることだ。これによって、自治体ごとに個別システムを構築・運用しなくても業務を効率よく遂行できるようにし、システムを構築したIT企業への依存や運用費の高止まりを是正することができると総務省では見ている。

 現在、実証事業は北海道、京都府、佐賀県、大分県、宮崎県、徳島県の6団体が総務省の委託を受けて進めており、電子申請の受け付けなどの住民向け業務、および人事給与や文書管理などの内部業務を行うシステムの共同利用を進めている。

 こうした総務省による実証事業が進められている一方で、自治体クラウド市場は先に紹介した長崎県のように自らのサービスを積極的に「外販」していこうという動きも出てきた。

 業界関係者の間では、「自治体発のクラウドサービスの外販が盛んになってくれば、複数の自治体クラウドが乱立する事態になって、効率性や行政におけるガバナンスの観点から、いろんな問題が生じてくるのではないか」と危惧する声もある。

 だが、自治体クラウドサービス自体、始まったばかりだ。総務省の実証事業のような取り組みはもちろん意義深く重要だと考えるが、ここはひとつ、長崎県のように「ほかの自治体システムにはないユーザーの立場に立った高い操作性や、低コストで構築・運用できる」と胸を張って自らのサービスを外部に売り込むような自治体クラウドが、もっと出てくることを期待したい。

 共同利用における効率の追求やガバナンスの問題は、同時並行で技術によって補えるところが少なくないはずだ。政府における取り組みでも「世界一便利で効率的な電子行政の実現を目指す」とうたわれているが、そのためにも自治体クラウドにおいては、長崎県のような「自治体発」の芽もうまく生かしてもらいたい。

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プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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