しかり上手は褒め上手ドジっ娘リーダー奮闘記(2/2 ページ)

» 2010年02月18日 11時30分 公開
[小俣光之,ITmedia]
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輩田さん 春美ちゃん、お疲れさま。X社はわが社にとって大切なお客さんだから、すぐに対応してくれて助かるよ。しかし、さっきはすごいけんまくだったね。たまたま通りかかったので聞こえたんだけど、内山くんが何かしでかしたのかい?

春美ちゃん はい、そうなんです。内山君が相談もなくお客さんに勝手な発言をしてしまって。彼はそういうことが多いので、今回はビシーッと言わなければと思って、つい声を荒げてしまいました。ああ、思い出すだけで腹が立ってきたわ!

輩田さん まあまあ、落ち着いて。ところで春美ちゃん、しかるのがわたし、しかられるのが春美ちゃんで、ああいう感じにしかられたらどう思う?

春美ちゃん いい気持ちではないですし、第一リーダーの面目丸つぶれです。

輩田さん そうだね。では、内山君はいまどんな気持ちだろう? ほかのメンバーや後輩の前でしかられて、とても嫌な気分だったのではないかな。いいかい、春美ちゃん。しかるときの基本は個別だ。みんなの前でしかるのは、ほかの人にも同じ注意をしたいときぐらいで、基本はあくまでも個別だ。そうしないと、本人はしかられた内容以上に人前で恥ずかしい思いをしたことに気持ちが向いてしまうし、周りの人も楽しい気分にはならないからね。しかも朝礼でこれから1日がんばろうというときに、みんなが沈んだ気持ちになってしまうのは、大きなマイナスだ。

春美ちゃん すみません。カッとなって冷静さを欠いておりました。しかるときは個別にですね、肝に銘じます。では……。

輩田さん ああ、まだまだ。それと、しかるときには昔のことを蒸し返すようなこともしない方がいい。一方的になったり高圧的になったりするのも良くない。さっきみたいに「そんな権限はない!」なんて言われたら、誰だって相当ムカッとくるよ。しかる方が感情的になると、しかられる方も感情的なことばかり頭に残るものだ。しかるときこそ冷静に、その都度細かく丁寧にするのが1番だ。

春美ちゃん 重ね重ね、申し訳ありません。席に戻り次第、内山君に謝ります。それと、実は彼はX社のプロジェクトでとても活躍してくれて、X社からお礼をいただいていたのです。それを褒めようと思っていたのに、カッとなって忘れていました。

輩田さん メンバーの叱咤激励はリーダーの大切な役目だけれど、褒める方は忘れがちなものだ。褒めるときはね、しかるときとは逆に、みんなの前で褒めるのも効果的なことが多いんだよ。みんなの前で褒められれば、本人はうれしいし、周りの人も明るい気持ちになれる。次は自分も褒められようと前向きにもなる。注意点は、周りにえこひいきと取られないようにすることだ。

 そうそう、しかるときや褒めるときは、口頭か文章か手段にも気を配るといいね。口頭だと相手の反応を見ながら話せるメリットがあるし、文章だと受け手が後で何度でも読み返せるメリットがある。褒めるときは、盛大な飲み会を開催するとか、金一封を出すとか、賞状を作るとか、演出してあげるのもいい。相談してくれれば、わたしから会社に交渉してあげよう。

春美ちゃん アドバイスありがとうございます。褒める方の話を想像したら、わたしも楽しい気持ちになってきました。気持ちで仕事の能率もかなり変わりますから、賞罰はとても大切ですね。

輩田さんの今日の「喝!」

 メンバーの賞罰をきちんとできてこそ、一人前のリーダーだ。叱咤激励の使い分けはチームを活性化させるために重要と心得よう。

 しかるときの注意点

  • 個別にしかる
  • こまめにしかる
  • 口頭や文章など、手段を使い分ける

 褒めるときの注意点

  • みんなの前で褒める
  • どんどん褒める
  • えこひいきと取られないように注意する
  • ご褒美や演出も、たまにはいいだろう

輩田さん ところで。しんこちゃん、そんなところでモジモジしていないで、部屋に入ったらどうだい? どうせ、部屋の外で盗み聞きしているんだろう?

しんこちゃん なんだ、気が付いていたんですね。内山君は先ほど席に戻りました。ドーナツを2つも取られましたが、ひと通り話を聞いたら元気になってくれたのでホッとひと安心です。

輩田さん ありがとう。しんこちゃんは何でも自分で抱え込むところがあるけれど、こうやって周りに気配りできるのが良いところだな。春美ちゃんはすぐに感情的になるけれど、白黒はっきりしているし行動すれば早い。性格は人それぞれでリーダーとしてのやり方も1つではないけれど、足して2で割ったらちょうど良いぐらい2人はタイプが違うなあ。

 おっ、いいこと思いついた! しんこちゃんと春美ちゃんの対戦ゲームを作ったら売れるんじゃないだろうか。リーダー対戦型のロールプレイングゲームで、リーダー論の勉強にもなって……。おぉ、売れそうだ! 新製品としてちょっと検討してみるか。

しんこちゃん&春美ちゃん ちょっ、ちょっと輩田さん。

輩田さん 売れるパターンが浮かんできた、いいぞいいぞ。しんこちゃんはお菓子とカラオケでパワーアップ、春美ちゃんは香水とアクセサリーがいいかな。そうだ、困ったときにはスーパースターの輩田を頼れるようにして……

しんこちゃん&春美ちゃん 輩田さん、そんなことばっかり考えていると、リアル対戦ゲームでダブルパンチをお見舞いしますよ。食らえ、しんはるパーンチ!!!

著者プロフィール:小俣光之

小俣光之

 日本シー・エー・ディー株式会社代表取締役社長・現役プログラマー。
多趣味で話し好きで説教臭い。
ITmedia オルタナティブ・ブログの「プログラマー社長のブログ」執筆中。
著書に、「プログラミングでメシが食えるか!?」、「プログラミングでメシを食わせろ!!」など。



(構成:鈴木麻紀)

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