6年間で3倍強 拡大するクラウド市場

ミック経済研究所の調査によると、国内のクラウド市場は2009年度から2014年度の6年間で3倍強に拡大する。当面はプライベートクラウド市場が成長をけん引し、今後はパブリッククラウド市場の比率が高まる見通しだ。

» 2010年03月10日 13時11分 公開
[藤村能光,ITmedia]

 調査会社のミック経済研究所は3月9日、国内におけるクラウドコンピューティング市場の規模を調査し、結果を発表した。同市場は今後6年間で3倍強に拡大する見通しだ。現在は、クラウドの仕組みを取り入れたシステムを構築する「プライベートクラウド」が市場規模全体の約7割を占めるが、今後はサーバやストレージなどのIT資産をサービスとして使う「パブリッククラウド」の規模が拡大していく見通しだ。

6年間で市場は3倍強に

 IT市場全体が縮小する中、2009年度はクラウド市場に参入するベンダーが目立った。既存のITサービスをクラウドに対応させ、関連メニューを増やしたり、新たなクラウドサービスの提供を開始したりしている。参入企業はハードウェアベンダー、システムインテグレーター、データセンター事業者など幅広い。

 こうした中、2009年度のクラウドコンピューティング市場の規模は、前年度比138.4%の1941億円になる見通し。2009年度以降は年平均29.4%で成長し、2014年度には6570億円の市場規模になると予測される。市場は6年間で3倍強になる試算だ。

クラウドコンピューティング市場 市場規模推移(出典:ミック経済研究所) クラウドコンピューティング市場 市場規模推移(出典:ミック経済研究所)

 同調査では、プライベートクラウドとパブリッククラウドの2つの分野の市場規模も調べた。2009年度のプライベートクラウド市場は1354億円で、クラウドコンピューティング市場69.8%を占める。パブリッククラウド市場は587億円で、構成比は30.2%だった。2009年度以降はパブリッククラウドの比率が高まり、2014年度に約4割の市場規模を占めると予測される。

大企業の導入が中心となるプライベートクラウド

 2009年度のプライベートクラウド市場は、前年度比135.0%の1354億円に上る。同2009年度から2014年度までの6年間で年平均26.1%の伸び率で推移し、2014年度には4030億円になる見通しだ。市場規模は6年間で約3倍増となる。

 ミック経済研究所は、大企業を中心にプライベートクラウドの構築が進んでいると指摘。仮想化技術で大量のサーバやストレージを統合することで、システムの拡張性を確保したり、コスト削減につなげたりするのが主な目的だという。

パブリッククラウドは成長基調、PaaS、IaaSが鍵を握る

 2009年度のパブリッククラウド市場は、前年度比147.1%の587億円になる見込みだ。2009年度から2014年度までの6年間で年平均36.1%の成長率を見せ、2014年度には2540億円の規模になるという。IT資産のコストが固定費から変動費に変わる点、最新のアプリケーションを必要に応じてサービスとして利用できる点、バージョンアップ作業に伴う人的コストを削減できる点――などのメリットが、今後の市場成長に寄与する。

 ミック経済研究所によると、現在の同市場の中心はSaaS(サービスとしてのソフトウェア)であり、今後の成長の鍵を握るのはPaaS(サービスとしてのプラットフォーム)、IaaS(サービスとしてのインフラストラクチャ)になる。

 PaaS、IaaSは現在、外資系ベンダーのサービスが中心である。だが国内ベンダーが仮想化技術を取り入れたデータセンターの構築を進めており、PaaSおよびIaaSを提供する準備を始めている。

 サービスを利用する企業側は現在、パブリッククラウドのセキュリティ、可用性、信頼性に不安を抱いている。ベンダーによる導入事例の整備やクラウドサービスの稼働率の公開などが企業の不安を解消し、市場拡大につながるとしている。


 国内でクラウドサービスを提供する41社に面接取材を行い、市場規模を推定した。同調査ではクラウドコンピューティングの定義を、(1)リソースを仮想化技術で共有化、(2)インターネット技術を活用、(3)オープンアーキテクチャを採用、(4)B2Bビジネスであること――の4点を満たしたものとしている。



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