クラウド、スマートグリッド、地デジが起こすビッグウェーブ伴大作の木漏れ日(2/2 ページ)

» 2010年10月20日 08時00分 公開
[伴大作,ITmedia]
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足下で繰り広げられている巨大な変化

 ここまで述べてきたような変化が、今世紀始めのわずか10年間ほどで、インターネットや携帯電話、ブロードバンド業界の構造そのものを変えてしまった。同様に、今後ほかの産業である、電力業界や自動車産業、家電業界にも同じような現象が起こるに違いない。

 電力業界は「スマートグリッド」、自動車産業は「自動車のCO2排出削減」、家電業界は「地デジ」が震源地となりそうだ。もちろん、変化のエネルギーの中心を、ICTが支えている。

 スマートグリッドは当初、石油資源の代替を目的として始まったが、やがてソーラーパネルや風力発電機などの発電用機器、次いで蓄電池や、インバーターなどの蓄電、配電機器にも目が向けられるようになり、スマートメーター、電力ルーターなど、従来の発電、送電、給電、エネルギー消費全体を見直す機材にも注意が払われるようになった。

 もちろん、産業としての発電、送電事業の今後に大きな影響をもたらすのは間違いなさそうだ。また、その動きの中に新たなビジネスチャンスを見出すことも多いにありえる話だ。これら一連の投資金額の総額は、およそ100兆円以上とも言われている。

 自動車のCO2削減も、環境汚染や石油依存からの脱却を目指したのだが、途中からガソリンスタンドと電力会社の給電網の統合という方向に動き出そうとしている(昭和石油がソーラバネルを開発生産、販売しているのはその典型だ)。だが運送手段としての自動車が変化しない限り、CO2削減には限界がある。つまり、自動車そのもの、そして道路を含めたインフラの進化が欠かせない(世界中で高速鉄道と都市間鉄道の見直しが起きているのは、これらの動きと同期している)。

 これにより消滅する市場と創出される市場に関する見積もりは、今のところ発表されていないが、経済産業省の資料によると、世界の自動車生産台数は7315万台とされており、それ以外の道路建設、燃料生産などを併せると、巨大な金額になる。その内の何割かが新しい投資に振り向けられるだけでも、巨額だ。

 インターネットに始まった技術革新はやがて、全ての家庭、産業、日常生活にまで入り込んでくる。

 地デジについては、アナログ地上波の停波を来年に控えている。これは、受像機が高精細薄型パネルに変わるだけではない。受像機そのものがPC技術の延長線上にあることに加え、収録、番組制作のプロセスに大きな変化をもたらすだろう。また使用する周波数が変化し、ミリ波を使用するため、難視聴問題が顕在化している。その解決のため、広帯域光ファイバー通信が普及した。

 放送と通信の融合は、単に通信媒体の共通化だけでは終わらない。コンテンツ分野においては、YouTubeのようなインターネット放送も従来の放送局と同じように視聴される可能性が高まる。既に薄型テレビではこの戦いが始まっており、世界を席巻した日本のテレビ業界は、韓国のサムスンやLGの後塵を拝している。デジタル放送のスタジオ設備、放送設備に関しても日本企業は優位を保てないでいる。もちろん、通信と放送の融合で最も話題になるコンテンツの分野では、米国企業のイニシアチブは揺るがない。

 どうやら今、僕たちの足元で起こっている変化(ビッグウェーブ)はとてつもなく大きく、その影響は計り知れないもののようだ。

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