日本企業にクラウド化を訴求するGoogle

「Gartner Symposium ITxpo 2010」の基調講演に登壇したGoogle エンタープライズ部門担当社長のデイブ・ジルアード氏が、企業ITの変革を促すトレンドと同社の取り組みを紹介した。

» 2010年10月27日 18時10分 公開
[國谷武史,ITmedia]
Google エンタープライズ部門担当社長 デイブ・ジルアード氏

 「コンシューマーITとモバイルの波が企業ITのクラウド化を推し進める」――ガートナー ジャパン主催のカンファレンス「Gartner Symposium ITxpo 2010」の基調講演に登場した米Google エンタープライズ部門担当社長 デイブ・ジルアード氏は、企業ITを取り巻く環境の変化をこのように語り、同社の企業向けクラウド戦略について紹介した。

 ジルアード氏は、こう指摘する背景として、コンシューマーITと企業ITの融合、モバイル機器の急速な普及の2つを挙げた。企業ユーザーが安価で使い勝手の良いコンシューマー向けサービスをスマートフォンのようなモバイルデバイスからインターネット経由で利用するという動きである。

 「AT&Tによれば、iPhoneの4割がビジネス用途だ。この動きを最も表している事実だろう」(同氏)。2013年にはスマートフォンの出荷台数がPCを上回るとされ、将来の企業ITの姿を見据えた時に、こうした変化は無視できないものという。

 ChromeブラウザやAndroid OS、Google Appsなど同社が提供するものの多くが、クラウド環境での利用を考慮したものになっている。ジルアード氏は、同社が定義するクラウドを「共有インフラの上に構築され、Webブラウザを通じて提供されるホスティング型のアプリケーションおよびプラットフォーム」と説明した。Webブラウザだけであらゆる場所からアプリケーションを利用できる環境を実現するのが同社のクラウドに対するビジョンである。

 しかし、今なお多くの企業のIT環境がファイアウォールの内側で運用することを前提に設計されていると、同氏は指摘する。ビジネスのグローバル化や買収・合併に伴う規模の拡大などが進む現代の経営環境には適さない状況だという。「USBメモリにデータを保存して持ち歩くといったことが考慮されていない、20年前の設計思想のままに利用されている」(同氏)

 クラウドを前提にした企業システムとして、同氏は分散型モデルを取り上げる。基幹業務を実行するメインフレームなどは従来通りファイアウォールの内側に置いて運用し、そのほかのアプリケーションやクライアントは個々に保護するという仕組みとなる。クラウドを企業で利用する上で最大の懸念材料がセキュリティの確保とされるが、分散モデルと各ポイントでの対策と併用することで、この課題をクリアすべきというのが同氏の考えである。

 ジルアード氏は、同社が提供するクラウド環境の事例を幾つか紹介した。例えば、今年春に発生したアイスランドでの火山噴火によって、数多くの欧州の空港が数カ月にわたって閉鎖され、多数の従業員が足止めをよぎなくされた。「危機管理担当者がGoogle Appsにスプレッドシートを公開して、社員に所在地や状況などを書き込んでもらうようにした。2時間で数百人が記入し、それを基に帰宅手段を講じた。数週間で全員の帰宅に成功したのだ」(同氏)

 このほかにも、自動車部品メーカーでは約3万人の従業員がスマートフォンから社内の情報にアクセスしているという。情報通信企業では、IT資産をGoogle Appsのスプレッドシート機能でも管理している。

 同氏によれば、Google Appsは300万社以上が既に利用し、更新率も90%に上るという。Android OSを搭載するデバイスが1日に20万台出荷されているなど、企業ITのクラウド化における同社の存在が既に企業に受け入れられつつあることを強調した。

 「日本でも数千社がGoogle Appsを利用しており、われわれは日本市場での投資を引き続き強化していく。こうした先駆的な企業がクラウドの普及に果たした役割は大きい。彼らが“ヒーロー”になるようわれわれは支援する」(ジルアード氏)

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