シマンテック、デスクトップ仮想化の展望を語る――全体像は今後に

シマンテックは、アプリケーション仮想化製品の新サービスパックをリリースした。それを踏まえ、デスクトップ仮想化市場に対する取り組みの一端を説明した。

» 2010年11月12日 19時01分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 シマンテックは11月12日、アプリケーション仮想化製品「Symantec Workspace Streaming」(SWS)の新サービスパック(SP6)をリリースした。これを踏まえ、デスクトップ仮想化市場での取り組みに関する説明会を都内で開催した。

 Symantec Workspace Streamingは、Windowsアプリケーションの仮想化と配信、PC上での実行環境を提供するもの。SP6では、Windows 7上でInternet Explorer(IE)の複数バージョンを同時に実行できるようにした。IE 6でのみ動作するアプリケーションやシステムの改修が難しいという企業ユーザーなどの要望に対応した。

仮想化したIE 7とIE 8を同時に実行させた様子

 仮想化が可能なアプリケーションのテンプレートを複数用意しているほか、仮想化した複数のアプリケーションのパッケージ構成を自動的に再現する機能も搭載する。

インフラレイヤには入らず

 デスクトップ仮想化は、企業のIT投資の中で注目が高まりつつある分野となっている。クライアント環境を仮想化技術でデータセンターに集約することで、運用管理コストの削減やセキュリティの向上を図れるというのが理由だ。

 デスクトップ仮想化市場では、主要ベンダーのVMwareやCitrix、Microsoftがクライアントマシン全体を仮想化して統合インフラ(VDI)上で運用するという方向性を打ち出している。だがシマンテックは、OSやハイパーバイザーなどコンピュータの基盤となる部分の仮想化には関与せず、アプリケーションに近いレイヤを対象とした仮想化ソリューションを展開する方針を明らかにした。

 理由についてプロダクトマーケティングマネジャーのベイ・キサング氏は、「将来的にデスクトップ環境はあらゆるデバイスや場所で利用される。そのためには仮想化基盤に依存しない仕組みが重要だ」と説明している。

 こうした方針を具体化する例として、SWSでは特許技術の「Filter Driver」という仮想化したアプリケーションの実行環境を提供する。Filter Driverはカーネルに近い部分で動作するといい、デスクトップ環境全体を仮想マシンにするよりも柔軟性のあるアプリケーションの管理が可能になるという。

Filter Driverによる効果。アプリケーション間でのやりとりを柔軟に制御できるという

 SWSの導入ケースとしては、ライセンスの管理やコストの削減を目的にしたものが多く、大学での採用が目立つ。国内では東北工業大学(仙台市)が今年4月にSWSを導入。CADやグラフィック関係のアプリケーションを仮想化して複数キャンパスの各教室にある端末で実行するようにし、SWSの管理サーバから授業や自習で使う際にはライセンスを動的に配布、回収する運用を行っているという。これにより、ライセンス関連の費用を約42%削減した。

 キサング氏は、「世界中に拠点があり、利用するアプリケーションの種類が多い企業でも、集中管理とセンターから配信する仕組みによって運用コストの削減効果が見込まれる」と話している。


 主要ベンダー各社が提唱するVDIは、クライアントのコンピューティング環境を大きく変えるものであるだけに、現時点ではまだ普及期には入っていない。シマンテックのソリューションは、クライアント環境周辺のコスト削減や管理の効率化といったユーザーが直面している課題に対してメリットを提供するが、デスクトップ仮想化の動向によって、さらにどのような特徴を打ち出せるかは不透明だ。

 今年、Symantecは暗号化ベンダーのPGPやVeriSignの認証事業などを次々と買収し、セキュリティ分野のポートフォリオを拡大させた。同時にバックアップなどのストレージソリューションとセキュリティソリューションを統合していく方向性も明らかにしている。具体的な戦略は公表していないが、仮想化やクラウド化というエンタープライズITのトレンドに対して、それらを包括的にカバーする施策を展開することが予想される。

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