シマンテック、企業IT市場での生き残りをかけた戦略展開を説明

シマンテックの河村浩明社長は、企業IT市場での戦略説明を行った。セキュリティとストレージ分野を主体とした“水平分業型ベンダー”のスタイルを貫くとしている。

» 2011年03月08日 14時36分 公開
[國谷武史,ITmedia]
説明を行った河村浩明社長

 シマンテックは3月8日、企業IT市場における同社戦略の説明会を都内で行った。河村浩明社長が、重点施策に位置付ける4つの取り組みの進捗状況や今後の展開について明らかにした。

 2010年5月に着任した河村氏は、同年7月に企業IT市場における同社の戦略を発表。販売代理店経由による中小企業顧客向けの販売、OEMパートナーとの協業ソリューション、大企業顧客との関係構築、クラウドビジネスの4本柱を拡大させるというものだった。河村氏は今回の説明会で、2011年もこの路線を継続すると表明。2014年に国内の業績を2倍に高めたいと語った。

 直近1年の国内での業績動向について、2010年1〜3月期の売上高成長率は対前年比3%減となったが、同4〜6月期と7〜9月期はそれぞれ2%増の成長を達成。同10〜12月期は19%増と急拡大した。河村氏は、新規ライセンスの販売や大企業顧客向け販売の拡大、クラウド向けビジネスの大型案件の受注などが主な要因であるとし、就任後に掲げた4本柱の施策が軌道に乗りつつあることを強調した。

 4本柱の施策の2011年の展開では、中小企業顧客向けに統合型エンドポイントセキュリティの新製品「Symantec Endpoint Protection 12」とバックアップ製品「Backup Exec System Recovery」の次期バージョンを投入する。OEMパートナーとの協業では、富士通やNEC、日立製作所など国内各社との関係を深めるとともに、通信事業者の関係構築を進める。既にNTTドコモとPC向けセキュリティサービスの開発に着手しており、KDDIやソフトバンクモバイルとの協議も開始したという。

 大企業顧客向けには、「データセンタートランスフォーメーション」と「情報セキュリティプラットフォーム」という2つのコンセプトを提案。前者は企業のデータセンターにおける異種混在環境の複雑性を解決することを目指したもので、具体的にはストレージを中心としたITリソースの統合運用管理を支援するソリューションを提供する計画。後者ではウイルス対策や情報漏えい対策、脆弱性管理、ポリシーおよびコンプライアンス管理といった各種セキュリティ対策を統合した基盤を提供する。

 クラウスビジネスでは、同社傘下のメッセージラボが提供するSaaS型セキュリティサービスのメニューを拡充するほか、クラウド事業者および販売代理店がシマンテック製品の機能をSaaSとして展開できる支援を進めることにしている。

 こうした取り組みを基に製品面では、統合型製品の拡充や通信事業者経由によるサービスの開発、モバイル向けセキュリティと管理ツールの提供、セルフサービス型のバックアップ製品、データセンター向けのストレージ管理製品などを投入する計画である。特にデータセンター向けのストレージ管理製品では、異なるデータセンターの複数のストレージを一元管理できるもので、「Enterprise Object Store」の名称で開発を進める。河村氏は、「クラウドの普及でデータセンターのストレージはペタバイト時代に突入しており、複雑なストレージ管理の課題を解決できるだろう」と語った。

直近1年の成長率の推移をドル建てと円建てのグラフで説明した。「円建てのグラフで日本のビジネスの実力が分かる」と河村氏

 河村氏は、就任後に表明した各種施策が好調に推移している状況に自信を示しつつも、会見の場では「生き残らなければならない」との言葉を繰り返した。その背景には、大手IT各社が垂直統合型のビジネスモデルを拡大させている現状があるようだ。同氏は、Symantecのビジネスモデルが水平分業型であり続けることを表明し続けてきた。

 今回の説明会でも河村氏は、「特定のベンダー環境にしばられたくないというユーザーは多く、そこに水平分業型ベンダーの存在意義がある。当社はセキュリティとストレージの専門家として、大手各社と良好なパートナー関係にあり、今後もこの分野でビジネスを展開する」とコメント。先に挙げた施策を実らせ、セキュリティとストレージのビジネスで強固な立場を確立することが目標となっている。

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