現場で効くデータ活用と業務カイゼン

高知のホテルがFileMakerで目指す「地産地消」生産者との取引をiPadで(1/2 ページ)

高知パレスホテルの中野氏は「生産者にiPadを提供し直接取引をすれば効率が上がる」と話す。

» 2011年06月09日 08時00分 公開
[岡田靖ITmedia]

 高知市内でホテルと飲食店を経営する高知パレスホテル。地元・高知の農産物や海産物を積極的に使ったレストランで人気を集め、自社施設だけでなく百貨店内にも直営店を出している。

 その同社の業務管理に、iPad上のFileMaker Goを活用した仕組みが使われ始めたのは2010年のこと。以前から社内で細々と用いられてきたFileMakerのデータベースを統合、拡張するかたちで作られたという。その仕掛け人である、高知パレスホテル 経営企画室の中野英幸室長に話を聞いた。

iPadとFileMaker Goの登場を機に全社統一のシステム構築に着手

高知パレスホテル 経営企画室 室長の中野英幸氏

 中野氏は、15年ほど前からFileMakerを使ってきたという。もともと個人的な資料の整理などに活用していたが、表計算ソフトでは1つのファイルに収まらないことなどに不満を感じ、FileMakerに注目することとなった。以降、独学でFileMakerを使いこなし、主に顧客管理データベースなどとして使い続けている。

 部署が変わるたびに、その部署でFileMakerのデータベースを作ってきたという中野氏だが、気付けば何度かの異動を経て、各部署にFileMakerの情報資産が残されるようになっていた。

 「他のソフトもいろいろ使ってきましたが、自由度の点でFileMakerが最も使いやすいと考え、自分が携わった部署で活用してきました。そのデータの統合を図ろうと考えたのは、iPadとFileMaker Goの登場がきっかけです。FileMaker Goなら、PC上のFileMakerとは違って、いろいろな可能性が期待できます」(中野氏)

 こうして、高知パレスホテルでは2010年9月にiPadを導入することとなった。当初12台、のち1台を追加し、今では13台を使っている。データ統合は2010年の10月頃から着手され、仕入れや販売、労務管理などの各種機能が、宿泊部門と、レストラン各店舗、合わせて7部門のデータを、一つのトップ画面から扱えるようになっていった。

 「iPadへの対応は簡単ですね。基本的にはPC上で作り込んであったものを、iPadの画面に合わせてレイアウトなどを調整してできました。サーバ構築に少し時間がかかりましたが、FileMaker Go版のインタフェースは一週間ほどで完成しました」(中野氏)

高知パレスホテル社内システムのトップ画面

設置場所の限られた百貨店内の店舗でも社内システムが使えるように

 FileMaker Goを入れたiPadは、その7部門それぞれに配布されている。各店舗では無線LANルータを設置してあり、iPadからWi-FiとVPNを経由してサーバに接続、データを扱う構成だ。セキュリティに配慮して、端末上にデータを持たないようにしている。

 特にiPadのメリットが発揮されるのは、これまでPCを設置できなかった百貨店内店舗だ。

 「設置場所を確保できず、これらの店舗ではPCを置いていなかったのです。もちろん店舗にもPOSレジはありますが、これは百貨店側の機材なので我々が手を入れることはできません」(中野氏)

 つまり、これらの店舗では、社内システムにアクセスする手段そのものが存在していなかったというわけだ。iPadとFileMaker Goによって初めて、現場から直接、社内の情報を扱えるようになった。

FileMaker Go上の勤務表画面

 一部の部署では社内システムにアクセスする唯一の手段となったiPad、FileMaker Go。そこからはデータを閲覧するだけでなく、現場からの入力も行っている。そのため、ユーザーである各部署のスタッフに対しては、導入直後に講習会を実施した。年齢の高いユーザーなどでは馴染むまでに少し抵抗があったり、PCに慣れたユーザーではiPadの画面タッチ操作に戸惑ったりしたこともあるようだが、おおむね受け入れられたという。

 「講習会は導入後に2〜3回実施しただけで、特に問題は出ていませんし、若い人たちは最初から何の違和感もなく使っています」(中野氏)

 システムには現在、画面上でチェックして出勤シフトを決めることができる勤務表機能なども備わっており、ほぼ全てのスタッフがiPadとFileMaker Goを利用している。

携帯性の高い端末だけにセキュリティにも配慮

 なお、百貨店内の店舗では、iPadはバックヤードの事務所で保管するのが原則となっている。朝、最初に出勤したスタッフが店舗へ持ち出して利用し、閉店時に事務所へ戻しているという。盗難や紛失を避けるための工夫だ。

 このシステムでは端末上にデータを持たず、サーバに接続しなければ情報に触れることができないようになっている。万が一の盗難や紛失の際にも情報漏洩のリスクは低い。さらに念のため、もし紛失などが生じた際には、その店舗に所属するユーザーのパスワードを変更するといった対策が取られる。

 ちなみに、通常時のアクセス権限は組織階層を基準とした3〜5段階の設定を使っているとのこと。アルバイトやパートは閲覧のみ、といった具合だ。管理者となっているのは経営企画室の2名のみで、他は取締役など幹部も含め一般ユーザーとしての扱いだ。

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