現場で効くデータ活用と業務カイゼン
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» 2011年06月09日 08時00分 公開

生産者との取引をiPadで:高知のホテルがFileMakerで目指す「地産地消」 (2/2)

[岡田靖,ITmedia]
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単なるデータ統合管理にとどまらず、今後はさまざまな発展も

レストランのテーブルに置かれたメール会員募集POP

 さて、システム構築の効果をみてみよう。まずは、仕入れや販売実績のデータを現場で入力できるようになったことで、本部でも迅速に情報を把握できるようになった。

 特に、週1回の営業会議のための資料作成が効率化されたという。

 「これまで、1週間分の数字をまとめ上げるためには会社に出なければなりませんでしたが、今ではFileMaker上にデータが整っているので作成は迅速にできるようになりました。そういう意味では、大幅に改善しています」と中野氏は言う。

 以前は部署ごとの経営状況を把握できるようにと損益計算を行っていたが、紙の帳票から仕入れと売上のデータの入力・管理で現場に大きな負担が生じることから廃止されていたという。現状では、そのデータは本部でFiileMaker上に入力しており、現場の負担は生じていない。

 「このデータから、最終的にはシステム上で各部署の損益計算をきちんとできるようにし、スタッフの誰もが見られるようにしていきたいと考えています」(中野氏)

 さらに、全員がシステムに触れられる環境を生かし、いくつかの機能強化が進められている。

 例えば、従業員向けの健康自己管理は、各人が自己管理をするだけでなく、スタッフ全員の管理状況をシステム上で把握することが可能となっている。接客業、特に飲食店では衛生管理の上で従業員の健康管理も重要だが、全員が使うシステムの上で一括して行えるようにすることで、組織全体で健康・衛生管理に取り組むのにも役立つというわけだ。

 また、2011年5月からは、レストラン部門でメール会員サービスが開始されており、その会員管理もシステム上に組み込まれた。

 「メール会員の利用状況を本部でも知りたいので、FileMaker上に作りました。まだ始めたばかりですが、今後はレジとの連動も目指しており、そのあたりも自社で作りたいと考えています。欲を言えば、POSレジは初期費用も保守費用も高いので、それよりは一般に普及していて低価格なiPadなどを、もっと接客現場でも活用していいきたいですね」(中野氏)

伝票のチェックや入力の負担を減らすべく電子取引に取り組む

 中野氏を補佐しているのが、高知パレスホテル 経営企画室の田邉寛美氏だ。FileMakerへのデータ入力、データ管理などに携わっているという。

 「以前はレストラン部門で働いていましたが、4月から経営企画室に配属され、今回初めてFileMakerを使いました。システムについてはよく分かっていない私ですが、業務効率化に役立っている実感はあります」(田邉氏)

 田邉氏は、主に仕入先からの納品書や請求書など仕入れに関するデータのチェックや入力を行っているが、その負担は少なくないようだ。現状では、月に5万件もの伝票を扱わねばならず、その作業には1人で1日3時間あまりを費やしており、作業が1日分遅れると、1日仕事になってしまうこともあるという。

 この負担を軽減すべく、中野氏は今後、仕入先からの伝票を減らそうとしている。

 「紙の伝票は場所もとりますし、チェックなどにはかなりの労力を使います。特にレストラン部門の仕入れでは、地元の農産物海産物を使っているため、個人生産者との直接取引が多いので、お互いに伝票のやり取りを減らしたいのです」(中野氏)

 そこで中野氏は、FileMakerのWeb画面を利用して、仕入先とのやり取りを行えるようにしていくことを考えている。例えば発注情報をメールで送って、仕入先がWeb画面に入力して処理するような仕組みにすれば、単価などに変更があっても、先方が直接FileMakerに入力することで作業の負担を減らせるはずだ。

 「生産者の方の多くはPCを持っているので、Webでの取引にも問題ないと思います。また、PCを持っていない人も、iPadなどを持ってもらえば、こうした仕組みに対応してもらえるのではないかと期待しています。山間部や沿岸部の生産者も多いので、3G通信エリアには不安もありますが、今後2年間で8割、紙の書類でのやり取りを減らしたいですね」(中野氏)

独学で使いこなしたが、外注するより迅速に開発できコストも安い

 中野氏はFileMaker Goについて、次のように評価している。

 「FileMaker Goの機能について、これといった不満はありませんね。むしろ、FileMaker Goの存在がなければ、今のようにFileMakerの使い方を広げることはなかったかもしれません。新しいバージョン1.2の機能ではAirPrintに感動しました。PCからの印刷より早く、けっこう快適です」(中野氏)

 また、FileMaker Pro/Serverについても、最新バージョンでの機能強化を評価している。

 「今のバージョンになって、Excelとの連携が使いやすくなったのが最大のメリットです。FileMakerにもグラフ機能が搭載されましたが、今の時点では2つか3つの場面で使っているだけで、多くの場合は今まで通りExcelに落としてグラフ化しています。といっても、たまにしか数字を見ない人のためにグラフを作っており、我々としてはあまりグラフを多用しているわけではありません。普段から数字の変化を見ている人は、表を見ればすぐ理解できますからね」(中野氏)

 今も新たな機能の開発が進む高知パレスホテルの業務システムだが、開発を担当するのは中野氏一人だけだ。主に業務の合間の時間などを使って構築しているものの、もともと開発者としての経験があったわけではなく、全くの独学で使いこなしてきたという。

 「Web上の情報を参考にすることもほとんどなく、ユーザー会にも参加したことがありません。作りながら考えているというか、使っていくうちに身についてきたような感じですね」と語る中野氏。今後も、外注せず自分たちで作り上げていきたいと考えている。

 「外注するにしても、イメージを伝えるのに時間がかかるし、それよりもFile Makerで作りながら考えていった方が、よほど効率的です。実際、宿泊のシステムやPOSレジなどに比べるとFileMakerの開発は安く、今回のシステムでも、会議資料などの紙の利用が大幅削減できた分で、FileMaker Go、FileMaker Server、iPadなどの初期投資は1年程度で償却できてしまったのですから」(中野氏)

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