経営者や担当者が抱える課題を解決するためにITを活用するのは必要であるし、今後も大きな方向性は変わらないであろう。ただし、前記したようにIT導入によって効果が出るものとそうでないものがある。簡単にいえば、定量的なものはIT活用度を高める効果があり、定性的なものについては、導入目的や業務プロセスをよく検討するべきということである。
企業がIT活用をするための取り組みステップを以下のとおり示す(図表3-1参照)。
大切なのは、日々の問題意識である。これがないと何をやってもうまくいかない。私が顧客によくアドバイスするのは、緊急度や重要度でやりたいこと、実現したいことをまとめる方法である。やりたいことを順位付けする場合に、どうしても緊急度の高いものが上位になる傾向がある。ただ、企業としてみると中長期的に重要なものがあるはずだ。
前記した人材の確保・育成やマーケティング、新技術(新商品)の研究開発などはいつになっても重要な経営課題であろう。同時に日々新しい情報についての収集も重要だ。新しいITサービスや環境変化など、外部環境の変化は常にウォッチしておく必要がある。定期的にシステム会社から商品説明を受けたり、展示会に参加したりすることも有効である。
次に、やりたいことは、定量化できるのか、それとも定性的なものなのかを検討する。たとえ定性的なものであっても、区分けするなどして定量化できるものがあるかもしれない。定量化できるもので、IT導入の効果が得られるものについてはIT活用を考えるようにする。IT導入効果については、できるだけ定量化することがポイントとなる。多くの企業では、IT導入効果(投資効果)をどのように測定するのか困っているのではないだろうか。効果を定量的なものにすることで導入効果を測定しやすくなるのだ。
次回はIT活用の失敗事例を取り上げ、企業がITサービスを導入するときに「やってはいけない」ことを取り上げる。
春日丈実(かすが たけみ)
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 チーフコンサルタント
筑波大学大学院経営システム科学修了。電子部品メーカー、ダイヤモンドビジネスコンサルティング(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)を経て、2006年1月より現職。業務改革支援、システム構築支援を中心に活動。内部統制(J-SOX)構築・運用支援では、顧客企業の業務プロセス改革支援、IT統制構築支援を中心にコンサルティングを実施。最近はIFRS(国際会計基準)コンサルティングを手がけている。
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