日本企業のオフショア開発をサポートする大連の“新名所”とは?

オフショア開発などの拠点として多数の日本企業が進出する中国・大連。市の西側に広がる大連ハイテクパークに、昨年末、新たな機能が備わった。

» 2011年07月13日 11時40分 公開
[伏見学,ITmedia]

 西は渤海、東は黄海に面し、古くから交通の要所として栄えてきた中国東北部の都市、大連。現在、人口625万人を抱えるこの都市の急速な発展を支えるのがIT産業である。

 1991年3月に国家施策として大連ハイテクパークが建設されて以降、主にソフトウェアのオフショア開発や業務のアウトソーシングの拠点として、IBM、Oracle、DELL、HP、SAP、NEC、富士通、NTTグループなど、世界中から名だたるIT企業が進出している。

 ハイテクパークに拠点を構えるこうした企業のビジネスを支援するために、2010年12月24日に設立されたのが「大連研究開発・テスト保税センター」である。保税とは、関税の徴収が留保されている状態を指す。同センターに入居する企業は、ソフト開発の評価および製品テストで使用する輸入機材や消耗品を今までと比べて簡単に保税扱いできるようになった。これによりさまざまな面でメリットが生まれるという。

大連ハイテクパーク投資促進局の殷鐘健副局長 大連ハイテクパーク投資促進局の殷鐘健副局長

 具体的には、(1)貨物引渡しまでの日数が従来の約10日から3日以内に短縮、(2)保税扱いのための保証金が不要、(3)アウトソーシングサービス契約に基づく輸入貨物が保税可能、(4)保税貨物の返送が無期限(2年を超えた場合は税関に申告)、(5)中国内の各保税通関港から保税センターへ直送可能、といったことが実現できるようになった。

 「これまでは、大連大窯湾保税港区で保税申告し、許可を得て保証金を支払い、貨物を指定場所へ税関倉庫に移動し、貨物検査を受けて、ようやくハイテクパークへ搬送されたため、多くの時間や手間、コストがかかっていた。これらの課題を解消できたのは大きい」と大連ハイテクパーク投資促進局の殷鐘健副局長は強調する。

 また、保税センターには、EDIシステム、通関代行、物流などの税関業務関連サービスだけでなく、人事や税務、法務、購買などの付属サービス窓口も設置しているため、業務をワンストップで行うことができるという。

 既にコニカミノルタや豊田通商、パナソニックといった日本企業が保税センターを活用している。パナソニックは今年6月に保税センターへ入居を開始した。「今までは申請書類が煩雑で記入ミスなども見られたが、申請業務が簡便化し、手続き回数が大幅に削減したことで、業務上のリスクが低減した」とパナソニック アドバンストテクノロジーの青井孝敏社長は効果を説明する。

 また、今回の施策に関して適用企業第1号となったコニカミノルタは、保税センターの利用によって、通関に関する手続き件数が5割低減し、手続きに要する時間が6、7割も短縮したという。コニカミノルタ軟件開発(大連)有限公司の永田研司総経理は「従来、中国の生産工場で作った機材は日本や香港を経由して大連に搬送していたが、直送が可能になったことで、リードタイムの大幅な短縮につながった」と力を込めた。

 ※本記事は、2011年7月8日に開催された「大連研究開発・テスト保税センター説明会」での講演を基に作成。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ