「箱売りから卒業」 仮想化とクラウドに軸足を移すDell

Dellの法人ビジネスの戦略について、同社担当者は「ソリューション展開に必要な体制が整った」と語っている。

» 2011年07月29日 19時34分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 「箱(ハードウェア)売り企業からソリューションプロバイダーに生まれ変わった」――7月29日に開催されたデルの法人ビジネスに関するカンファレンスで、米Dell エンタープライズソリューションズ ストラテジー&テクノロジー バイスプレジデントのプラービン・アシュタナ氏は、同分野におけるDellの戦略をこう紹介した。

 その理由として同氏は、サーバ仮想化に代表されるITインフラの統合化やクラウドコンピューティングへのシフトといった、顧客企業におけるIT環境の変化を挙げた。このため、同社ではハードウェアにソフトウェアやサービスも加味し、仮想化とクラウドに求められるソリューションの提供を目指してきたという。近年は企業買収を活発に展開し、ソリューション企業としての体制を拡充してきた。

 例えば、2007年に買収したEqualLogicと、2010年に買収したCompellentの技術を組み合わせることで、仮想化時代に即した高速性と拡張性の高いストレージシステムを提供できるとしている。また、2010年に買収したScalent Systemsによって、物理と仮想の両方のITリソースを効率的に一元管理する基盤を実現できるとした。

 アシュタナ氏によれば、同社では戦略展開において「インテリジェント・コンピューティング・アーキテクチャ」「バーチャル・ネットワーク・アーキテクチャ」「Fluid Dataアーキテクチャ」の3つの軸を定めた。これらは仮想化を前提としたITリソースの最適化、それに対応するネットワーク環境、効率的なITリソースの管理の提供を可能にするものだという。

 「仮想化やクラウドに関するオープンな活動への参加、また、VMwareやMicrosoftといったこの分野で強力なパートナーとの協業を通じて、あらゆる形態のクラウドに求められるソリューションを展開する」とアシュタナ氏は語っている。

法人ビジネス戦略について説明したアシュタナ氏(左)とトロイ氏

 また、公共・ラージエンタープライズ事業 エンタープライズ・ソリューション部門 バイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーのドナ・トロイ氏は、同社が顧客企業に提供できるものとして、戦略的投資の実現を挙げ、自社の取り組みを例に紹介した。

 かつてのDellでは年間のIT予算の8割を運用・保守費が占めており、戦略的投資に回せる予算は2割であった。これを改善するため、ITリソースの「標準化」「簡素化」「自動化」「クラウド化」というプロセスを進め、現在では運用・保守費の割合は48%に低下した。削減したコストは20億ドルという規模で、IT予算の半分以上を戦略的投資に向けられるようになったという。

DellにおけるITリソース最適化での具体的な取り組み。9000台のサーバを仮想化し、6000台の物理サーバを削減した

 こうした取り組みで培ったノウハウを顧客企業に提供するため、同社では社内組織を再編。次世代データセンターやクラウドなど8つのソリューションテーマを定め、これを提供する「エンタープライズ・ソリューション部門」「エンドユーザー・コンピューティング部門」「サービス・ソリューション部門」の3部門と、営業・技術担当者からなるチームを組織した。

 「この体制で顧客企業を全方位から支援する。End-to-Endのソリューションを提供していきたい」(トロイ氏)と語っている。

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