ビッグデータの収集・解析が注目を集めているが、今ある顧客データや在庫データなどをいかに活用するかという視点も重要だ。マスターデータを効率良く管理し、収益向上につなげるためにはどうすればいいか。インフォマティカの吉田社長に聞く。
「日本企業のデータ管理の水準は、米国と比べて3年ほど遅れている」――データ統合ソリューションを手掛けるインフォマティカ・ジャパンの吉田浩生社長はこう話す。
昨今、多種・多量のデータ――いわゆる「ビッグデータ」を解析し、ビジネスの競争力を高めようとする考え方が注目されている。だが吉田社長によれば、多くの日本企業は、業務システムが扱う在庫情報や顧客名簿などの「マスターデータ」の管理も十分な状況ではないという。
「5年ほど前からマスターデータ管理に対する企業の関心は非常に高く、『近々マスターデータ管理製品を導入したい』という声を毎年たくさん聞いてきた。だが、それだけニーズが減らずに残っているということは、裏を返せば長年マスターデータ管理に手をつけられず放置している企業が多いということだ」(吉田社長)
多くの日本企業がマスターデータ管理の重要性を認識しつつ、なかなか実施に踏み切れないのはなぜか。吉田社長は「従来のマスターデータ管理製品は“後ろ向き”な側面が目立っていた」と指摘する。例えば製品データの重複を排除するといった使い方が一般的で、売り上げ向上などのポジティブな効果を見込むことが難しかったという。
そこで同社が提供しているのが、異なる種類のデータを統合的に管理できる“マルチドメイン”のマスターデータ管理(MDM)製品「Informatica MDM」だ。同製品は、複数の業務システムから顧客、製品、販売パートナーなどのデータを抽出し、それらを統合して一つのマスターデータを作成するというもの。Facebookなどのソーシャルメディアとの連携機能も搭載し、単なる在庫管理や顧客管理にとどまらないデータ活用を可能にするとしている。
吉田社長によれば、米国では既にソーシャルメディア上の顧客データと製品の在庫データなどを結び付けてビジネスに生かしている企業もあるという。あるECサイト事業者は、顧客の購買パターンや生年月日、その顧客のソーシャルメディア上の友人のデータなどを統合的に管理し、マッチングエンジンと組み合わせることで、「友人の誕生日が近いようなので、これを機会にこの商品をプレゼントしてみてはいかがでしょうか」といったリコメンデーション機能を実現しているとのことだ。
「従来のマスターデータ管理は、顧客という本来最も目を向けるべきところを見ずに、単に在庫管理を徹底しようというだけのものだった」と吉田社長。同社はマルチドメインMDM製品の提供を通じ、日本企業の「攻めのデータ活用」を支援していく考えだ。
同社が国内市場でもう一つの重点施策として掲げるのが、企業のクラウド活用支援である。具体的には、既存の業務システムで扱っているデータを抽出・変換し、クラウド上の業務アプリケーションに送る(あるいはその逆)ことで、企業がクラウドサービスと既存システムを連携させて使えるようにしていくという。
昨今、CRM(顧客関係管理)や経費精算などの業務アプリケーションをクラウド型で提供するサービスが増えてきている。クラウドの利点としてよく挙げられるのが「初期投資なしで従量料金で利用できること」だが、吉田社長は「企業がクラウドサービスを安価に使うためには、クラウド上のアプリケーションと既存システムとのデータのやり取りも従量料金で行う必要がある」と指摘する。
例えば、企業がクラウド型の経費精算サービスを利用する際に、既存の会計システムとデータを連携させたい場合がある。こうした異なる業務システムの間でデータをやり取りするにはETL(Extract, Transform and Load)ツールを導入するのが一般的だが、そのために追加の投資をするとなると、クラウドサービス本来の価値である導入のしやすさを殺してしまうことになる。
そこで同社が米国で提供しているのが、SaaS型のETLツール「Informatica Cloud」だ。企業は同サービスを利用すれば、既存システムとクラウドサービスが混在する環境でもデータの相互やり取りを従量料金で行えるようになるという。
「われわれは既存システムとクラウドサービスをつなぐ“土管”を用意している」と吉田社長。Informatica Cloudの国内版の提供時期は未定とのことだが、吉田社長は今後、同サービスの国内投入を前向きに検討していく姿勢を見せた。
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