中小企業を取り巻くバックアップの現状、未来

システムや業務データのバックアップの重要性を意識しつつも、十分に取り組めていないという企業は多い。市場の現状やバックアップ技術の今後について、米Symantecの担当者に話を聞いた。

» 2012年03月16日 10時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]
米Symatec 情報管理グループ プロダクトマネジメント担当バイス プレジデントのアミット・ワリア氏

 東日本大震災をきっかけに多くの中堅・中小企業が事業継続性や災害復旧(DR)の観点からシステムやデータをバックアップすることの重要性を再確認している――バックアップ製品やサービスを手掛けるベンダーの中には、2011年後半のビジネス動向をこう振り返るところが少なくない。だが世界的には、こうした認識がまだ十分に浸透していないともいわれる。このほどバックアップ製品の最新版をリリースしたSymanteでプロダクトマネジメント担当するアミット・ワリア氏に、市場動向やバックアップ技術の今後について尋ねた。

 ワリア氏によれば、中小企業の中でも従業員数が少ない企業ではバックアップの重要性を意識しつつも取り組めていないか、重視されていないと話す。一方、従業員数が100人を超える規模の企業ではバックアップを戦略的に実行していきたいという積極的な姿勢がみられる。

 「われわれの調査では中小企業の半分がDRの計画を持っていなかった。DRのコストが高く、複雑な作業を伴うことが敬遠される理由だが、そもそも情報を保護していなければ、万が一の場合に事業を継続できなくなる」

 この点は、顧客データや経理データといった事業に関わるデータを企業がどれだけ重視するかに関わる。災害だけでなくシステム障害でもデータが失われれば事業に支障が出る。「“痛い目にあって遅きに逸した”ではいけない」(アミット氏)という。

 バックアップの重要性を強く意識する中小企業が「戦略的に実行したい」とするのは、主にデータの増大やシステム環境の複雑化が理由とのこと。サーバ仮想化への意欲が大企業並みに高まってきたという。

 Symantecはこうした現状に対し、先に発売したバックアップ/リカバリソフトの「Symantec Backup Exec 2012」で、(1)シンプルなユーザーインタフェースの採用、(2)データの重複排除と仮想や物理環境を問わないバックアップ/リカバリ、(3)小規模オフィス向け特別版の提供――という特徴を打ち出した。アミット氏は、「簡単にバックアップでき、さまざまな環境にリカバリできる。コストをかけずに事業継続性を高められるので、バックアップが十分にできていないという企業はぜひ使ってほしい」と話す。

 中小企業における事業継続性の確保という点ではクラウド活用も注目される。業務システムをSaaSなどのパブリッククラウドサービスにすることで、災害やシステム障害のリスク低減を図る。バックアップでも同様だという。

 「北米など一部地域のみだがオンラインバックアップのサービスも始めており、小規模企業の利用が拡大している。個人向けの“ノートン”のサービスでは既に90ぺタバイトのデータを預かるまでになり、企業向けサービスも日本を含めてアジアに提供先を広げていく」

 クラウド利用については、セキュリティ上の懸念からまだ様子見というところもある。「当社のビジネス(セキュリティ)をご存知なら、その心配はご無用」(アミット氏)とのことだが、ユーザーが取り得るバックアップの手段は確実に広がってきた。

 それでは、バックアップを重要と意識していない企業はどうなるのか。「ビジネスの情報が大切なことは企業規模に関係ない、はずなのだが」と同氏。同社パートナーと連携して、企業顧客の意識変化を促していきたいという。

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