「デルモデル」の強さの源は現場にあり! Dellの日本市場に向けたほぼすべての製品を生産する中国・廈門のカスタマーセンターを訪問した。
中国の南方にあり、深セン、珠海などとともに中国経済特区の1つに数えられる福建省・廈門(アモイ)。台湾との国境に位置し、海を隔てて数キロ先には台湾の大金門島や小金門島が浮かぶ。
風光明媚な都市として国内外から多くの観光客を集める廈門は、その立地から、古くは東南アジア貿易の拠点として繁栄し、現在でもアジア諸国が領事館を置くなど海外との交流は活発に続いている。地場産業は石材関連が特徴の1つであり、日本で使う墓石や建設石材の大半は廈門で生産されている。
廈門には多くの海外企業が進出し拠点を構える。日本企業ではパナソニックやTDKをはじめおよそ200社が進出するほか、欧米企業ではDell、GE、Coca-Cola、CITI BANKなどが拠点を設立している。
その中でも代表的な1社であるDellの取り組みについて、数回にわたり、廈門における同社の事業展開、ビジネス上の戦略や狙い、そして主にアジア市場に向けた将来の展望などを伝えていく。
Dellは1998年、アジア市場向けに出荷するPCやサーバ、ストレージなどの生産工場「China Customer Center1(CCC)」を開設したのを皮切りに、ここ廈門の地に営業拠点や製造拠点などを相次いで稼働させている。2001年には中国市場に向けた製品を製造する「CCC2」、2003年にはセールス機能を持つ「CCC3」、2006年には日本、韓国、台湾、香港の市場に向けた製品を製造する「CCC4」、そして2011年には新たなセールスおよびサービス拠点となる「CCC5」を設立した(現在、CCC1は閉鎖。CCC3は今年以降CCC5に統合予定)。
上述したように、CCC4では日本市場に向けたさまざまな製品を生産、出荷している。先日発表されたインテルの最新プロセッサXeon E5ファミリー搭載のサーバ製品「Dell PowerEdge サーバ」もCCC4で製造されている。廈門での製品生産能力は年々高まっており、事業がスタートした1998年から2011年までに480倍も向上した。2011年にはサーバやワークステーションなどを合わせて約5000万台がCCC2ならびにCCC4で生産されたという。なお、ノートPCについては、組み立て作業などのさらなる効率化を実現するため、ODM(委託者のブランドで製品を設計、生産すること)による外部での生産を行っている。これによって30%のコスト削減を達成したという。
現在、Dellは米国、ブラジル、ポーランド(台湾のFoxconnが製造)、マレーシア、インド、中国と世界各地域に生産拠点を持っている。基本的な生産工程はグローバルで共通だが、その中でも最新鋭の技術を投入したCCC4は他拠点と比べてより効率的な生産ラインを備え、最も大規模な製造工場といえよう。
廈門を取り巻く中国国内での体制も強固だ。大連には国内向けサービスセンターを、上海にはグローバルデザインセンターおよびグローバル調達拠点を、成都にはグローバルオペレーション拠点を、そして廈門にも2つの生産工場のほか、グローバルコマンドセンターと地域サービス本部を設置する。さらに細かく見ると、中国には6000以上の営業拠点があり、3500以上の都市を網羅している。認定を受けたエンジニアは2000人に上る。これらがシームレスに連携することで世界に名だたる巨大なサプライチェーンシステムを作り上げているのである。
Dellといえば、直接販売と受注生産を組み合わせたビジネスモデルを示す「デルモデル」があまりにも有名だ。顧客からのオーダーを受け、その要望に合わせて外部サプライヤーから部品を調達して製品を生産することで、不良在庫を抱えるリスクをなくすというメリットを持つ。このデルモデルの確立は同社の売り上げを飛躍させ、ビジネス競争力の源泉となった。例えば、オンラインによる製品販売においても大きな効果を発揮し、今では1秒間に全世界で65人の顧客が製品購入し、年間でその数は20億人に上るという。
こうしたビジネスモデルを支えるのが、グローバルで統合されたサプライチェーンマネジメント(SCM)であり、生産や調達の現場で磨き上げられた高いオペレーション技術である。Dell Chinaで生産部門のディレクターを務めるLin Yu Huang氏は「顧客にもっと価値を提供するためには、社内のプロセスを改善し、もっと効率的かつコスト安で製品を生産できるようにしなければならない」と強調した。
次回は、世界随一の生産拠点であるCCC4の内部で見た、品質管理に対するDellの取り組みを紹介する。
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