ユーザーに未来の出来事を提案するソーシャルメディア「Fture.me」を日本ユニシスが立ち上げた。「セレンディピティ(偶然の出会いや発見)」を通じてユーザー同士やユーザーと企業を結ぶ仕組みを目指すという。
日本ユニシスは6月上旬、新たなソーシャルメディア「Fture.me(フューチャーミー)」の試験版サービスを立ち上げた。ユーザーの関心事に応じて「未来の出来事」を提案したり、その出来事に共感した相手と情報を共有できるのが特徴で、TwitterやFacebookといったフロー型のソーシャルメディアサービスとは異なる価値を追求するという。
Fture.meでは、まずユーザーが「ノート」と呼ばれるページに、今気になっていることやこれからしてみたいこと(希望)を登録する。ページに入力する内容は、その出来事のタイトル、カテゴリ、日付や時間、目的(行動内容)、位置情報など。ノートは「キャンパス」に登録され、ほかのノートも含めて一覧できる。おすすめ度や位置情報、時間などの項目で並べ替えることもできる。ノートの内容はタイムラインにも表示され、スケジュール帳のように自分が登録した内容を振り返ったり、近い将来の予定としてリマインドさせたりといった使い方ができる。
Fture.meのシステムではノートの項目に入力されたデータの相関関係などを独自に分析。ユーザーに対して関連性の高いノートを登録した別のユーザーの情報を提供したり、ユーザーが気に入るのではと期待できる未来のイベントを提案したりする。
例えば、サッカー日本代表チームの試合を応援したいといった場合、「サッカー」「日本代表」「試合(会場や開催日など)」「応援(行動)」などがキーワードになる。これを未来の予定としてノートに登録しておくと、同じような内容のノートを登録したユーザーのノートがシェアされる。気に入った相手なら一緒に応援するといった新しい“つながり”が生まれるかもしれない。
仮に仕事が忙しく試合会場に行けない場合、「オフィス近くで試合を観戦したい」とノートに追記しておけば、オフィス近くでパブリックビューイングのイベントを開催する飲食店の情報がユーザーに提供されるといったイメージだ。
「未来の出来事」では、例えば、過去のノートに登録したお気に入りの映画のジャンルなどを参考にして、システムが「今夜9時からテレビ放送されるこの映画をみる(かも)」とユーザーに提案してくれる。
日本ユニシスでは「セレンディピティ・ボット」という偶然の発見や出会いをきっかけに人や情報をつなぐ技術の開発に取り組む。Fture.meは30歳以下の若手社員による実験的なプロジェクトの一環として、セレンディピティ・ボットの仕組みを具体化したものになる。
Fture.meのプロジェクトに参加するビジネスサービス事業部の田中創氏は、「FacebookやTwitterではユーザーが体験した出来事を友人に発信することで情報が共有・蓄積される。Fture.meはユーザーが自分でも気付いていない好みに合った情報を受け取ったり、それを共感できる相手と共有したりできる、“自分のメモ帳”として活用できることを目指している」と話す。
企業向けシステムなどを手掛ける日本ユニシスが、Fture.meのようなコンシューマー向けサービスを手掛ける狙いはどこにあるのか――。ビジネスサービス事業部 営業一部の永井匡部長は、「企業が顧客と継続的な関係を構築できるようにしたい」と語る。
企業では顧客との継続した関係作りに、ダイレクトメールやメールマガジンなどを活用し、最近ではソーシャルメディアも利用するケースも広がっている。顧客の好みに応じた情報を提供したり、コミュニケーションを取ったりするには、顧客の性別や年齢、職業、購買履歴、アンケートなどで聞いた趣味(カテゴリー)といった「属性情報」を利用する。
しかし、属性情報だけでは「●歳・男性・会社員・趣味はドライブ」といった具合に、ある時点における顧客の“人となり”を断片的にしか表現できない。
「顧客と長期的な関係を築くには“個人の特性”を知ることが大切。個人の特性は常に変化していくので、Fture.meは変化するユーザーの特性を導き出して、その時々に応じて適切なコミュニケーションが取れる、コンテクストマーケティングの実現も目標」(永井氏)
上述の例のように、ユーザーがノートに書きこんだ自分の好みに関連する情報が“偶然”の形で提供されれば、思いがけない喜びにつながることも期待される。その情報を自分だけのものにできるし、共感できる相手とも共有できる。従来にないこうしたコンセプトがFture.meの特徴となっている。なお、Fture.meでユーザーが気に入った情報はFacebookやTwitterにも投稿できるようになっている。
Fture.meは試験版サービスであるため、現段階ではAndroidアプリからのみの利用となる。iPhoneやiPadでも利用できるようiOSアプリの提供も計画中。2013年春ごろには正式サービスに移行して、情報分析などの機能も追加したいという。
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