Googleの企業向けサービス、次のトレンドは「地図」?

Googleが都内で開催した企業向けカンファレンスで、Google MapsやGoogle Earthなどによる地理情報分野の取り組みについて説明した。地理情報分野は企業向けサービスで最も成長率が高いという。

» 2012年07月11日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 米Googleは7月10日、都内で企業を対象にしたカンファレンスを開催した。カンファレンスの記者説明会では同社の企業向けサービスで最も成長率が高いという、Google MapsやGoogle Earthなどによる地理空間情報分野の取り組みを紹介した。

 同社は企業向けの地理空間情報サービスとして「Google Maps API for Business」や「Google Maps Engine」「Google Earth Pro」「Google Earth Enterprise」を展開。同日には地図を使ったコラボレーション支援の新サービス「Google Maps Coordinate」の提供も発表した。

タルーン・バハナガー氏

 地理空間情報サービスを担当するGEO セールス統括責任者のタルーン・バハナガー氏によれば、Google Mapsの月間アクティブユーザーは約1億人、Google Maps API for Businessの提供先は80万サイトに上る。Google Earthは累計で1億ダウンロードに達したという。

 「Googleが扱う情報の20%に位置情報が含まれ、最近ではモバイルからに利用が急増している。地理空間情報サービスは昨年比で2倍の成長をみせ、最も勢いのある分野だ」とバハナガー氏は述べた。

 具体的な利用シーンとしては、企業がWebサイトでの拠点案内などにGoogle Mapsを利用しているのが多いが、バハナガー氏はより高度だというユーザー企業事例を挙げた。米DHLでは輸送中の荷物の現在位置をGoogle Mapsに表示して、顧客がいつでも確認できるようにしている。国内では日立建機が車両の所在や稼働状況を把握、管理するために利用している。ある携帯電話会社では契約者の通話が多い場所をGoogle Mapsで把握し、基地局設置の計画に役立てているという。

配送中の資産を追跡できるDHLのサービス事例
携帯電話会社では「呼(通話の呼び出し)」の頻度をヒートマップで表示させ、基地局計画に活用

 また、同氏はスマトラ島の植生分布図に使った事例も取り上げ、地理空間情報サービスが民間企業から調査・研究分野、政府機関に至るまで利用されていると述べた。これらサービスは、Webサイトでのマッシュアップによるサイト訪問者への情報提供の拡充から、グラフィカルな地理空間情報の分析や蓄積、管理に至るまで幅広い用途があると説明する。

 文字では把握しづらい情報でも地図に落とし込んで視覚的に表現することで、より高度に活用していけることが企業にとって大きなメリットになるとした。Google Maps Coordinateを発表したシニアプロダクトマネジャーのダン・チュウ氏は、米IDCの調査を引用して、2015年までに日本の労働人口の約65%がモバイルを業務に活用するとコメント。地理空間情報の活用が企業のビジネスにおいて鍵を握るようになるとの見方を示している。

地図作りを簡単に

 だが地理空間情報を活用するといっても、情報を地図上で表現する作業は容易ではないだろう。高度な情報を表現しようとすれば、地図に関する専門知識や表現技法が必要になっていく。この課題を解決するのが、Google Maps Engine(旧称Google Earth Builder)という。

 Google Maps Engineではユーザーが保有する地理空間のデータや地図を同社のサービス上に保存・管理したり、共有することができる。またAPIを介してユーザーの業務システムと連携させたり、サードパーティーが商用の地理空間情報サービスの提供基盤としても利用したりできる。

Google Maps Engineを地理空間情報のクラウドサービス基盤に位置付ける

 「CSVファイルなど地図に表現できるデータ形式であれば、大半のものをGoogle MapsやGoogle Earthに取り込んで表現できる。データを保護し、セキュリティにも配慮されたサービスだ」(Google Earth担当プロダクトマネジャーのディラン・ロリマー氏)。

 Googleの地理空間情報サービスをみると、日常的なビジネスシーンにおけるコラボレーションに地図を活用するといったものから、地図に落とし込んだ情報を高度に解析するといったものまで多岐にわたる。その多くは“地表面”の情報を焦点にしているが、Google Earthでは既に海中や宇宙空間を部分的に表現できるため、同社は将来的に“空間”という概念で情報を活用していくサービスの展開を視野に入れているかもしれない。

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