4つの傾向からひも解くチームメンバーとの付き合い方成功するITマネージャーの「人づきあい術」

プロジェクトには実にさまざまな性格、立場のメンバーが参加している。付きやすい相手もいれば、付き合いにくい相手もいるだろう。今回はメンバーに応じた接し方を解説する。

» 2012年11月07日 08時00分 公開
[青木裕,ITmedia]

 今回はチームメンバーに応じた接し方について解説する。ITマネージャーの方に話を伺うと、ある特定の部下との関係が著しく悪化していることに悩むケースことが多いように思う。どのようにして一人ひとりの部下と向き合っていくのか、ここに苦手意識をお持ちの方が多いのではないだろうか。

 特定の部下とうまく行かなくなる原因の一つには、部下への接し方、つまり、コミュニケーションの取り方がワンパターンになっていることが挙げられる。人と接する機会の多い営業職とは異なり、比較的閉ざされた人間関係の中で一定期間を過ごすことの多いITエンジニア出身のマネージャーは、どうしても人間関係を磨くスキルを修得する機会が限られてしまう。そのため、有効な人間関係を築くための「引き出し」が少なくなりがちなのだ。

 また、一般的には上司の背中を見て人間関係の構築の仕方を学ぶ人も多い。しかし、プロジェクトにおいてはプロパーと協力会社のメンバーが混在するため、ある種のヒエラルキーが生じてしまう。そのような環境の中で、良いお手本となる人と一緒に仕事をする機会がほかの職種に比べると少ないことも影響しているかもしれない。ぜひ読者には本連載を通じて、人間関係をつくることが上手なITマネージャーのロールモデルになっていただきたいと思う。

自分を知り、周りの人を知る

 具体的には、どのようにチームメンバーに応じて接し方を変えれば良いのだろうか。現場での実行を支援するためにも「行動」に焦点を当てて解説をしたい。

 コミュニケーションにおける「行動」には、「自己主張」の強弱と「感情表現」の強弱に応じて4つに大きく分類する考え方があり、弊社ではそれを「4つの行動傾向」と呼んでいる。

 「自己主張」と「感情表現」が強いか弱いかを見分ける個別の項目は、次の図の通りである。各項目を確認し、当てはまる方に丸をつけてみてほしい。

(クリックで拡大)

 当てはまる項目が多い方が、あなたの特性である。当てはまる項目の数で優劣がつけづらいこともあるかもしれないが、これは簡易診断なので、その場合には主観でどちらにするか決めて良い。これらを分類すると、以下になる。

  • 現実派――自己主張型で非感情表現型
  • 社交派――自己主張型で感情表現型
  • 理論派――非自己主張型で非感情表現型
  • 友好派――非自己主張型で感情表現型

 どの「派」が良いとか悪いということでもないが、ご自身は何派になっただろうか。

 ITマネージャーの方々を対象にした研修では、現実派2割、社交派1割、理論派3割、友好派4割という具合だ。

 余談になるが、ITマネージャー以外に対象を広げてみると、経営者や上級管理職になればなるほど、「現実派」の要素を持つ方が増える傾向にある。また、停滞して内向きになっている、または「現実派」の要素が強い上司がいる組織においては「友好派」の要素を持つ人が増える傾向にある。つまり、もともとの個人の資質に加えて、職種や組織風土などに影響を受けるのである。

 それでは、各派にはどんな特徴があるのか、下記の表をご覧いただこう。

(クリックで拡大)

 まとめると次のようになる。

  • 「現実派」――行動力と決断力がある半面、自信家で自説にこだわり、他人から指示されるのを嫌う傾向がある
  • 「社交派」――話好きであり、アイデアが豊富で想像力がある半面、時として感情的になったり、非現実的になったりする傾向がある
  • 「理論派」――事実やデータを重視し、正確性と分析力がある半面、完璧主義者であるため、行動が慎重であり、変化に弱い傾向がある
  • 「友好派」――協調性があり、気配り上手で、忍耐強い半面、いい人になりたがるために対立を避け、受動的になる傾向がある

 「当てはまる点もあるし、当てはまらない点もある」と感じられるかもしれない。あくまで上記のような傾向があるということを理解いただければと思う。

 ご自身の「派」の特徴を踏まえた上で、次は部下がどの派に属すかを、ご自身をチェックしたのと同じように、「自己主張」と「感情表現」のスライドを参考にして、チェックしてみよう。

 もう一度「4つの行動傾向」のスライドを見てほしい。

 実は対角線にある派は一般的に相性が良くない。つまり、「現実派」(人間関係よりも仕事優先)と「友好派」(人間関係重視)、「社交派」(新しいことを始めるのが得意)と「理論派」(正確にやりたい、失敗したくない)の組み合わせに注意が必要になる。

 思い当たる節はないだろうか。「どうも苦手だな」と思っている相手について、どのタイプに属するのかをチェックし、コミュニケーションの取り方を立ち止まって考えてみてはいかがだろうか。

 次回は、各派に効果的なコミュニケーションの取り方について具体的に解説する。

執筆者プロフィール

青木裕(あおき ゆう)、ビジネスコーチ株式会社執行役員 ビジネスコーチ アジア 取締役。SIerにてプロジェクト運営にコーチングを導入。常駐先で運営手法が評価を得て、コーチング研修を実施。2006年、ビジネスコーチ株式会社に参画。2010年より現職。本連載記事を再編集した電子書籍「成功するITマネージャーの『人づきあい術』」が主要電子書店で入手可能です。


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