上司との人間関係を良くするコツ成功するITマネージャーの「人づきあい術」

前回までは部下となるチームメンバーからの評価を改善する方法を紹介した。今回は、部下としてのITマネージャーが上司から信頼を得るための方法を解説したい。

» 2012年10月31日 08時00分 公開
[青木裕,ITmedia]

 前回は主に部下との人間関係を改善するために、自分に貼られたレッテルを変える方法をお伝えした。今回は中間管理職として、上司からの評判をコントロールする(上司との人間関係を良くする)方法を、少々刺激的なタイトルであるが、「上司の取り扱い説明書(トリセツ)」というテーマを取り上げてみたい。研修や講演をしている弊社執行役員の清原豪士の知見をもとに解説する。

 あなたがマネージャーとして部下と接すると、一緒にやりやすい人、やりにくい人の傾向というものがあると思う。それでは、あなたが「部下」の立場になったとき、上司はあなたをどのように見ているのだろうか。

 実は、あなた自身が部下に感じているのと同じようなことを上司も感じているのである。

できる人ほど要注意

あなたが「部下」の立場になったとき、次の項目に当てはまることはないだろうか。

  • □「自分ができること=上司もできること」だと思っている
  • □上司のアラが目につく
  • □「意思疎通ができない上司=デキない上司」だと思っている
  • □上司の「No」に、反射的に怒る

 上司の立場からすれば、このような部下は「やりにくい」「面倒」以外の何者でもない。上司との関係がうまくいかないなら、上司に対して「一矢報いた」と思うかもしれない。けれども、上司をないがしろにしていては、まずまずの成果は期待できるかもしれないが、あなたが望むような大きな成果は上がらない。

 「できる部下」にとっては、上司に歩み寄りができるかどうかが、成長するためのポイントになる。歩み寄るというのは、「媚びを売る」「ゴマをする」ということではない。上司を知り、自分を知るということである。

上司を知っているか

 あなたは上司について、いったいどのくらいのことを知っているだろうか。当たり前だが、上司も人間なので自分に関心を持ってくれる人には好意を抱く。仕事での成果を上げるためには、上司について知っておくべき5つの軸がある。実際に弊社の清原が研修で使っている資料をご紹介するので、こちらに記入してみてほしい。

(クリックで拡大)

 幾つ書けただろうか。人は共感領域、例えば、出身地や趣味、住まいの場所など自分と共通項がある相手には親近感を持ちやすい。記入できた数が多いほど、親近感を覚えてもらえる可能性があるということだ。まずは上司との共感領域を見つけるためにも、上記の表をできるだけ多く埋められるようにしてみてはどうだろうか。

 上司がおしゃべり好きであれば、誰かと話しているのを聞いて書けるようなこともあるだろう。一方、典型的な寡黙な技術者タイプの上司であれば直接聞く、もしくは知っている人に質問することが必要だ。上司のことを知らないということなら、とにかく話をして、コミュニケーションの量を増やそう。大切なのは、質より量である。

今の自分には理由があることを知る

 自分の立場が上司であれ部下であれ、周囲に対して次のように感じることはないだろうか。以下に示した4つのことは、自分自身の行動の裏返しなのだ。

周りに助けてもらえない

 「自分は頑張っているのに周りは何で助けてくれないのだろうか」と疑問を持っているとしたら、それは「周りを助けてこなかった」ことの裏返しである。使い古された言葉であるが、「GIVE AND TAKE」の世界である。もし周りの助けが必要ならば、まず自分が誰かを助けよう。

やりたいことをさせてもらえない

 これは「やるべきことをやって来なかった」ことに原因がある。上司としては、任せた仕事すら満足にできない部下は信用できない。約束を破られたようなものだ。小さな約束を守れない部下には、残念ながら自由もなければ裁量もない。やるべきことをきちんとやって、信頼を積み重ねよう。

お客には好かれるが職場の人には嫌われる

 本当のあなたは後者だと知るべきだ。常駐しているITエンジニアには当てはまらないかもしれないが、一般的に職場の人と過ごす時間は、顧客と過ごす時間よりもはるかに長い。それがゆえに素が出てしまうのである。素の自分の中に、周りから嫌われる何かがある。このままでは、ITマネージャーとしてチームで成果を上げにくくなる。何が原因なのかをすぐに把握した方が良い。自分では分からなくても、周りの人はその原因が何なのか良く知っている。恐れずに聞いてみてはどうだろうか。

評価が不公平だ

 これは評価基準以外の場面で、ポイントを落としたくなるような言動をしていることに原因がある。第3回目のコラムでご紹介した「人間関係を悪化させるITマネージャーの言動」でチェックしてみてはどうだろうか。

 会社という組織には変えようのない3つの現実がある。

  1. 理想の上司も理想の職場もない
  2. 上司は「親」ではない
  3. Giveのない部下に今以上の生活はない

 最後は質問で締めくくりたいと思う。

「会社を変えますか?上司を変えますか?それとも、あなたが変わりますか?」

 次回は「チームメンバーに応じた接し方」について解説する。

執筆者プロフィール

青木裕(あおき ゆう)、ビジネスコーチ株式会社執行役員 ビジネスコーチ アジア 取締役。SIerにてプロジェクト運営にコーチングを導入。常駐先で運営手法が評価を得て、コーチング研修を実施。2006年、ビジネスコーチ株式会社に参画。2010年より現職。本連載記事を再編集した電子書籍「成功するITマネージャーの『人づきあい術』」が主要電子書店で入手可能です。

清原豪士(きよはら つよし)、ビジネスコーチ株式会社執行役員。外資系商社、外資系生命保険会社、ベンチャー企業、銀行にて営業、統括、役員などを歴任。営業組織に特化したチームビルディング、課題解決型ワークショップ、組織運営コンサルティングに強みがある。


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