グローバルで勝つための道(第3回)田中克己の「ニッポンのIT企業」(2/2 ページ)

» 2012年11月07日 08時00分 公開
[田中克己(IT産業ウオッチャー),ITmedia]
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IBMに競り勝つ

 欧米ITベンダーとの差異化も図る。これまでのプロダクト中心からサービス提供を重視していくこと。その一環から、アプリケーション開発から運用までを支援する「グローバル・デリバリーセンター」をアジアや欧州、米国などに設置し、各国の技術スキルセットを生かしたサービス提供力を高めている。

 その成果は出始めている。2011年末、IBMに競り勝って受注したという米保険会社Blue Cross and Blue Shield of North Carolina(BCB SNC)の案件が好例だ。同社のデータセンターとICTサポート部門の要員185人を引き継いで、ICTインフラサービスを提供するもの。契約金額は5年間で約2億5000万ドルになる。受注獲得に向けて、グローバル・チームを設置し、成功体験を持つイギリスや日本もプロジェクトを支援した。ユーザー企業からこうしたグローバルな対応力を理解されたことも、受注にこぎ着けた要因だという。

 もう1つは、富士通オーストラリアが2009年にオーストラリアのカンタス航空からアウトソーシング契約を獲得した案件である。同航空会社が利用するPCサーバやストレージ、パソコンなどのIT機器と、遠隔サポートなどのサービスを提供するもの。このノウハウを生かして、ドイツのルフトハンザシステムズなど2社から同様な案件を獲得した。こうした横展開を含めた大型商談を受注するチームを結成し、各国のチーム員で情報共有するなどサポート体制も整備してきた。

 この時、富士通オーストラリアCEOだったのがボードレー常務である。2003年8月に同社CEOに就いて約8年間で、同社の売り上げを約3倍に伸ばし、ブレークイーブンだった利益もきちんと確保できるようにしたという。「日本と密接な関係を築いたからだ」(ボードレー常務)。ばらばらな対応から、「One Fujitsu」で立ち向かう体制に切り替えたということだろう。「各国がもっとつながっていくことで、どんどん良くなっていく。欧州やブラジルなども富士通の一員として活動している」(同)。

 富士通のユーザー層も、ローカルからグローバルなユーザーへと広がっており、国境を越えたサービス提供を求められている。クラウドサービスやアウトソーシングなどが有力になる。「標準化し、ポートフォリオを揃える」(ボードレー常務)。そして、世界で同質のサービスを供給できるようにするのが成功への道になる。


一期一会

 56歳のボードレー氏は2011年4月、海外ビジネス部門を担当する執行役員常務に就いた。前任のリチャード・クリストウ執行役員副社長の退任に伴う人事だが、富士通オーストラリアの実績が評価されたのだろう。ただ、富士通には50人以上の執行役員がいるが、外国人の執行役員はボードレー氏1人だけだ。

 富士通は目下のところ、外国人役員を増やす計画はないようだが、ボードレー常務は「私1人ということではない。私の下に、各国のCEOがいる。私を含めて、各国CEOが来日し、グローバルで強くなってきている。2012年4月には、各国のマネジメントレベル約200人が都内で会議を開いた」と、外国人執行役員の人数は問題ではないという。

 ボードレー常務は「海外は利益ある成長を目指す」とする。国内外の競合を見渡すと、富士通はもっと効率化できる余地があるという。まずは各地域のスキルセットを調べて、無駄のない配置にする。リストラもする。さらに、シェアードサービスを活用する。そんな改善策にも取り組んでいる。

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