勝ち残れ! 中堅・中小企業

家電選びと同じ、ユーザーは用途を明確にしたサーバ導入をITアナリストに聞く(2/2 ページ)

» 2012年12月27日 10時00分 公開
[取材:石森将文/構成:伏見学,ITmedia]
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仮想化とクラウドを有効活用する

 さて、改めてコモディティ化したサーバ製品を選定する上で、ユーザーが重視すべきポイントを考えてみたい。岩上氏は「サーバ選びも家電選びも同じ」だと述べる。ITシステムだからといって特別視することはなく、どのような機能、どのくらいの容量が必要で、どこに設置するのかをユーザー自らの基準で判断すればいいのだ。

 しかしながら、現状はそうした基準を売り手が決めてしまい、やや高めのシステムを提案されてしまうケースが散見されるという。そのために、「用途に関係ない、不必要なサーバラックを購入してしまったり、オーバースペックなシステムを構築してしまったりして、自社に適合したサーバ導入ができていない中小企業も少なくない」と岩上氏は指摘する。

 もしそうなってしまった場合に、泣き寝入りするしか方法はないのか。ユーザーができる効果的な対策として、岩上氏はシステムの仮想化を提案する。仮想化はハードウェアとOS/アプリケーションを切り離すことにより、サーバ機器に故障が生じた際にもシステムを別のサーバ機器に迅速に移行できるなどのメリットがある。この「切り離す」という状態を作っておけば、社内システムをクラウド環境へ移行する障壁も下がってくる。

 高めのスペックを持ったサーバ提案を受け入れる代わりに、売り手に対して仮想化環境構築の支援を求めるなどといった攻めの姿勢を持つことも重要だ。さらにクラウド環境で試験的にシステムを構築して、それを自社サーバに移行するという、逆の流れの取り組みについても岩上氏は期待を寄せる。

 「ITは工作機械など『モノ』が伴う他産業と比べて、本来、テスト的な取り組みがやりやすい産業であるにもかかわらず、そうしたことが少ない。現在はクラウド環境で試用ができても、そこで蓄積されたデータや設定を自社内環境で再現するには相応の手間がかかる。仮想化を活用すれば、クラウド環境での試用期間中に蓄積したデータや設定をそのまま自社内に移設するといったことが今よりも手軽に実現できるようになるはず」(岩上氏)

 そうすることで、ユーザーはクラウドを使うかオンプレミスを使うかという選択肢を、実際に試してみた上で検討することが可能になる。サーバを導入する際にも試用した実績や経験を踏まえて話ができるため、自社に適合したスペックを選びやすくなる。

 「なるべく低い初期投資で実運用に近い取り組みを行って感触を得ることが大切。自社内運用か、クラウドかという手段の選択はそうした感触を得た後で初めて判断できる。このプロセスが先に述べた『成功体験』にほかならない。いきなりサーバかクラウドかと問われても、ユーザーは実際に利用したことがなければ判断できない」と岩上氏は力を込めた。

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