ハイブリッドクラウド時代の運用管理を考えるITmedia エンタープライズ ソリューションセミナー レポート(2/2 ページ)

» 2013年01月15日 11時00分 公開
[伏見学,ITmedia]
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統合的なクラウド基盤を活用せよ

 次のセッションに登壇したのは、SCSK ITマネジメント事業部門 クラウド事業本部 基盤統括部 部長の海保祐文氏だ。海保氏によると、クラウドは技術の変遷ではなく、ITモデルの変遷であり、メインフレーム、オープン化、インターネットの流れを経て、クラウドが登場したのだという。

SCSK ITマネジメント事業部門 クラウド事業本部 基盤統括部 部長の海保祐文氏 SCSK ITマネジメント事業部門 クラウド事業本部 基盤統括部 部長の海保祐文氏

 そうした中、SCSKの顧客からの引き合い状況にも変化が生まれているという。同社の独自調査によると、2007年度には60%以上の顧客がオンプレミス型のシステムを望んでいたが、2011年度には実に86%がクラウドの提案を求めている。一方で、期待の反面、システム連携の複雑化や運用コストの高さなどを不安に感じるIT部門も多い。

 そこでSCSKが提言するのは、クラウドを統合的に管理、制御する基盤の構築である。「クラウド基盤によって各コンポーネントが柔軟に選択可能となる。その結果、コストと品質の最適化、フレキシビリティを両立し、クラウドによる新たなシステムのサイロ化を防止できるのだ」と海保氏は意気込む。

 統合的なクラウドサービス基盤としてSCSKが提供するのが「PrimeCloud」プラットフォームだ。具体的には、ハイブリッドクラウドインフラ基盤「USiZE」、ハイブリッドクラウド制御基盤「PrimeCloud Controller」、クラウド運営基盤「HEARTIL Management Center」、クラウド開発基盤「PrimeCloud for Developers」から成る。

 USiZEは、データセンターにあらかじめ用意したコンピューティングリソースをユーザーの必要量に応じて割り当て、24時間365日体制の運用とセットにして従量制課金で提供するというIaaSサービス。

 PrimeCloud Controllerは、さまざまなクラウドを統一的に管理制御できるハイブリッド対応のクラウドコントローラ。サーバやミドルウェアの設定、動作確認、クラウド間のVPN接続、操作ログの記録、監視サーバへのノード追加も自動で対応するため、運用の効率化を実現する。Amazon Web Services、NIFTY Cloud、VMwareなどのクラウド基盤に対応する。「イントラネット側から制御可能であること、事業者やプロダクトに依存しないオープンなスタンスであることが強みだ」と海保氏は説明する。

 HEARTIL Management Centerは、同社の運用ノウハウとITIL(Information Technology Infrastructure Library)を融合し、ITサービスマネジメントを実現するもの。サービス購入から運用状況把握までワンストップで提供する。

 PrimeCloud for Developersは、SaaS型プロジェクト管理環境とハイブリッドクラウド対応の開発実行環境で構成。開発コストの削減と納期短縮などを実現するサービスだ。

「クラウド基盤を活用することで、クラウド時代に適応したライフサイクルを実現し、ビジネススピードと効率性を継続的に向上できるのだ」(海保氏)

このセッションに興味のある方にはこちらのWebキャストがおすすめです。

ビジネススピードを加速!デモで見せるハイブリッドクラウド実現のポイント

現実的な解として脚光を浴びているハイブリッドクラウド。しかし現状は、どのようにすればハイブリッドを実現できるか、いまだ確立していない。

本セッションでは、あらゆるクラウドを統一的に制御する「PrimeCloud Controller」、サービスを管理し状況を可視化する「Heartil Management Center」等、SCSKのハイブリッドクラウド実現方法をデモンストレーションを交えて紹介する。

Webキャストの紹介ページへ (TechTargetジャパン)

容易な運用管理を

 続いてのセッションで、クラウドにおける運用管理の重要性を訴えたのが、日立製作所 ITプラットフォーム事業本部 統合PF開発本部 ITマネジメントソリューション開発部 主任技師の加藤恵理氏である。

日立製作所 ITプラットフォーム事業本部 統合PF開発本部 ITマネジメントソリューション開発部 主任技師の加藤恵理氏 日立製作所 ITプラットフォーム事業本部 統合PF開発本部 ITマネジメントソリューション開発部 主任技師の加藤恵理氏

 プライベート、パブリックともにクラウド市場の拡大が今後も見込まれる中、企業においてもコスト削減や事業継続性だけではなく、新たな成長手段としてクラウド活用への流れが加速すると同社は見ている。そうしたユーザーに対し、「安定したクラウド環境を提供するために、リソースの効率運用、安定稼働を維持できる運用管理が不可欠」と加藤氏は強調する。そのためのソリューションとして同社が提供しているのが、統合システム運用管理製品「JP1」である。

 クラウド運用において、特にJP1で実現可能なのが、インフラのスピーディーな構築、運用の自動化・標準化、サービスレベルやインフラ全体の統合監視だという。例えば、統合監視については、物理サーバと仮想サーバの両面から安定稼働を監視できるほか、OSおよびアプリケーションとストレージの一元監視、予兆検知を基点にした原因分析とその対処などを実行することが可能である。

「ハイブリッドクラウド環境における複雑な運用管理をITツールでシンプルにする。JP1は誰にでも容易にできる運用管理を実現していく」と加藤氏は力を込めた。

東京海上日動がプライベートクラウドを採用するわけ

 最後の特別講演では、東京海上日動システムズ 取締役の玉野肇氏が登場し、「東京海上日動におけるクラウドを活用した次世代インフラへの取り組み」と題した事例セッションを行った。

東京海上日動システムズ 取締役の玉野肇氏 東京海上日動システムズ 取締役の玉野肇氏

 同社は東京海上グループ全体のIT戦略の中核を担っており、顧客や契約者向けインターネットサービス、コールセンターシステム、代理店オンラインなどのITサービスを提供している。そうした同社が現在取り組んでいるのが、プライベートクラウドの構築だ。その背景にあるのは、情報システムの保守および運用コストの増大、サポート切れへの対応である。

 同社のサーバシステム状況を振り返ると、2000年以降、増加の一途をたどっている。2000年当時はサーバが482台だったが、2008年には約2000台に膨れ上がった。その大きな理由は、2004年の東京海上、日動火災の合併によるシステム統合、およびその後の事務プロセス、IT、保険商品のシンプル化を進めた「抜本改革」を実現するためのシステム開発である。その結果、ミッションクリティカルな業務を提供する大規模システム基盤から小規模の個別システム基盤までさまざまなシステム基盤を抱えることで、保守や運用のコストが増大した。加えて、ハードウェアやOS、ミドルウェアなどのサポート切れに随時対応するために多額の費用が必要となった。

 そうした課題を解決するべく、注目したのがプライベートクラウドである。情報システムに関して、これまで同社では、ソフトウェアやハードウェアは自社資産として購入し、個別に保守契約を締結していた。運用は社員と委任契約によるベンダー要員で対応していた。プライベートクラウドに移行することで、ソフトウェアとハードウェア、およびその保守は、あらかじめ定められた従量課金体系のサービスとして利用するほか、運用についてもシステムの一部はマネージドサービスで委託できるようになった。

「サポート切れへの対応では、仮想化環境にアプリケーションの改定を極力抑えた形で移行できること、移行作業およびその後の運用を含めて外部に委託できることを評価し、プライベートクラウドの活用を決めた」(玉野氏)

 加えて、サーバの集約も図る。自社のデータセンター内にプライベートクラウド環境を構築し、サポート切れのタイミングで順次システムを移行していく。「現在はコストの観点から自社センターに設置しているが、将来的にはハイブリッド環境を目指す」と玉野氏は述べる。

 パブリッククラウドの活用については、適用領域を見極めつつ利用を推進しているものの、さらなる品質向上やサービス運用の透明性などをベンダー側に求めていきたいとした。

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