工場の生産ラインとデータベースを直結、マイクロソフトとオムロンが協業

生産現場発のビッグデータをSQL Serverで分析する仕組みを提供する。モノづくりのノウハウを電子化し、経営戦略への活用や技術の伝承につなげるのが狙いという。

» 2013年01月30日 15時35分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 日本マイクロソフトとオムロンは1月30日、製造業界向けにデータ活用ソリューションを提供することで協業すると発表した。生産現場から取得した多種・大量のデータ(ビッグデータ)を分析して、生産品質の向上や市場変化などへの柔軟な対応、技術の伝承などに役立てられるよう支援していくという。

 協業の第一弾ではオムロンの制御システム「NJシリーズ」とマイクロソフトのSQL Serverを、LANなどを介して直結させ、NJシリーズで生産ラインから収集した各種データをSQL Serverに蓄積。SQL Serverのデータ解析機能を使ってデータを分析したり、SharePointやExcelなどで分析した情報を活用していける仕組みを提供する。オムロンの「NJ501-1320/1420/1520」が対応しており、4月下旬に発売予定の「データベース接続CPUユニット」(オープン価格)を追加して利用できるようになる。

ソリューションのイメージ

 こうした仕組みは、従来では業務現場のPCなどを介して行うことができたが、1秒あたりに転送できるデータ量に制約があり、データ活用の幅が限られていた。オムロンの制御システムにデータベース直結機能が加わることで、5倍のデータ量を扱えるようになったことから、ビッグデータとして活用できる可能性が出てきた。

SQL Serverと直結するオムロンのマシンコントローラ

 会見したオムロン オートメーションシステム事業統括事業部 コントロール事業部の横見光副事業部長は、「生産現場の可視化はこれまで行われてきたが、ロット単位でしかデータを扱えないなど制約があった。これからは個体1つ1つについてさまざまな角度からデータを取り、活用していけるだろう」と話す。

 同氏によると近年、製造業界では品質に関する国際的な法規制強化の動きや消費者意識の変化などからリコール件数が急増。リコールによって、告知や製品回収などの直接的なコストやブランドイメージの低下といった副次的な損失が大きなものになっており、製品の品質向上が企業の最重要課題になっている。また熟練技術者の退職も増えており、現場で培われた経験や勘を伝承できる仕組み急務になっている。

生産ラインから製造した個体1つ1つの画像やシリアルナンバー、ロット内容、レーザー加工での設定値、作業担当者、検査結果など多数のデータを取得する

 マイクロソフトとの協業については、「WindowsやOfficeなどMicrosoft製品はIT業界のデファクトスタンダード。ITに詳しくない生産現場の担当者であっても新たな仕組みをすぐに活用していけることが重要」(横見氏)が、パートナーシップを結ぶ決め手になった。

 両社では今回の仕組みを2013年中に30社へ提供したい考え。また、Windows 8やPhoneを搭載するデバイスやWindows Azureなどのクラウドサービスも利用したソリューション開発を進める。将来的には、ビッグデータの分析や活用で得られた知見を生産のさらなる自動化などに役立てるのが狙い。マイクロソフト インダストリーソリューション本部の浜口猛智本部長は、「ITを活用して製造現場のより高度な『みえる化』を実現していきたい」と述べた。

ExcelからSQL Serverのデータを呼び出して分析した様子。不良品の発生原因を突き止めていくというデモ

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