ニュース
» 2013年05月10日 08時00分 公開

社長の使うOffice 2010が怪しい それって違法ですか? 合法ですか?萩原栄幸の情報セキュリティ相談室(2/2 ページ)

[萩原栄幸,ITmedia]
前のページへ 1|2       

 この相談で筆者が実際に調査してから日数が経過したので、現在の状況を確認してみた。すると、このパッケージソフトの販売ページは既にクローズしていると思いきや、逆に活況を呈している。しかも、現状では日本語言語パック(正式購入で3150円)が不要で、ライセンスキーさえあれば、“純正”の日本語版Office 2010になるという(マイクロソフトのWebサイトにも掲載されているが、正確にはライセンスキーだけの転売は許可されていないので、パッケージを購入しその中のライセンスキーを利用するということ)。

 AmazonのWebサイトには、「3つのライセンスが問題な利用できく、しかも64ビット版環境でも問題ない」というコメントが掲載されている。さまざまなWebサイトで「合法であり違法ではない」と記載されていても、マイクロソフトからのコメントは無く、今まで未確認だったために、筆者は本件に関する調査で購入したものの、実際に使用したことは1回も無かった。

 そこで、マイクロソフトの関係者に「これは合法なのか?」と聞いてみたが、明確に答えてくれる人はいかなった。本稿を執筆にあたって、改めて同社に電話で確認してみた。「Windows Genuine Advantage」というところだ。

 当初は簡単に回答が得られると思っていたが、とんでもなかった。最初の担当者は、筆者の質問の意味を理解できなかったようで、「不正なソフト」を使ってOfficeを改造するような話になってしまった。仕方なく「分かる責任者に代わってください」と別の担当者をお願いしたが、どうにもこちらの真意を理解してもらえない。何回伝えても、「真贋については……」と言うだけだ。そうではなくて、正規品の中国版ライセンスを使うという前提で「教えてほしい」と相談したのだが――。

 その後、何回も「確認する」といっては電話が中断して、押し問答が続いた。

先方 販売店に合法かどうかの確認を……

筆者 販売店が合法と言えば合法ですね。それが日本マイクロソフトの見解ですね?

 こんな感じで約1時間も押し問答が続き、日本マイクロソフトとしての正式見解は次の通りということだった。

「当社ではそれが合法か違法か判断しかねます。もし不審な点があれば、中国のマイクロソフトに確認してください」

 「マイクロソフト社内で確認すべき問題では?」「中国語が話せない利用者にその対応を求めるのは無責任なのでは?」「日本法人から中国の法人に確認してもらえないか? 回答は後日でもいい」といったことを先方に伝えたが、体よく「やっかいばらい」されてしまった。筆者の立場も伝え、「それが正式見解で本当によろしいですね?」と念を押して確認したが、「それでいい」ということであったので、ここに掲載した。

 結局のところ、どうも「不正ではない」ということらしい。先方は明示的に話してはいないが、その照会窓口で日本国内での利用について「不正」と明言していない以上、「合法」であると判断するしかない。もし不正なら、明確に「不正」と答えるはずだ。

相談の回答

 さて最初の面談から2週間後に改めて面談し、次のように伝えた。

 社長の行為は明らかに「不正行為」に該当する。なぜなら、このパッケージは英語で「Microsoft Office2010 Home & Student」(日本では未発売)とあり、「非商用」が利用条件となっているからだ。つまり、このソフトを会社の文書作成が主目的で使用するのは「不正」なのである。

 ただし、BくんのPCで使う場合には、そのインストール方法がマイクロソフトの推奨する方法と違うだけで、行為そのものは不法性に問えないと考えられる。ただし今後、マイクロソフトとして「これは不正行為である」という表明をしたら、その後に関しては日本の正規版を購入するか、互換ソフトで代替するしかないだろう。

 その後、この会社の役員セミナーが開かれた。筆者は「コンプライアンス経営」の1つとして、この事案をデフォルメして、A社長を含む役員の方々に解説したのは言うまでもないだろう。その後、専務よりお礼のメールが届き、それによれば、A社長は中国版のパッケージをBくんに渡し、自分のPCには正規版をインストールしたとのことであった。

 企業経営者の中には、「倹約」を重視し過ぎて本人では気が付かないうちに「アウト」になる行為をされる方がいる。周囲が逸脱しないように気を配ることはもちろんだが、やはり、まずは本人が十分に注意すべき事象だろう。だからこそ、常に情報のアンテナを高くし、知識を吸収する努力が求められる。特に情報セキュリティ分野ではその事がとても大切である。

萩原栄幸

日本セキュリティ・マネジメント学会常任理事、「先端技術・情報犯罪とセキュリティ研究会」主査。社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会技術顧問、CFE 公認不正検査士。旧通産省の情報処理技術者試験の最難関である「特種」に最年少(当時)で合格。2008年6月まで三菱東京UFJ銀行に勤務、実験室「テクノ巣」の責任者を務める。

組織内部犯罪やネット犯罪、コンプライアンス、情報セキュリティ、クラウド、スマホ、BYODなどをテーマに講演、執筆、コンサルティングと幅広く活躍中。「個人情報はこうして盗まれる」(KK ベストセラーズ)や「デジタル・フォレンジック辞典」(日科技連出版)など著書多数。


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ