UNIXやWindowsからLinuxにシフトする Red Hatが描く成長戦略

RHEL事業を率いるジム・トットン氏が来日し、ハイブリッドクラウド時代を見据えた同社の成長戦略を語った。

» 2013年05月22日 17時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 レッドハットは5月22日、同社の事業戦略に関する記者説明会を開催した。米Red Hat バイスプレジデント兼プラットフォーム事業部門長のジム・トットン氏と、パートナーアライアンス営業統括本部長の古舘正清氏が、ハイブリッドクラウド時代における同社の取り組みを説明した。

レッドハットの古舘正清氏

 まず古舘氏は、IT市場の3つのトレンド――ハイブリッドクラウド時代の到来、デスクトップ環境の変化、インテルアーキテクチャ(IA)への統合――を挙げた。基幹システムがパブリッククラウドでも運用され始め、デスクトップ環境ではWindows XPのサポート終了に伴って“Windows離れ”が起きるとみる。データセンターではソフトウェアによってインフラ全体の仮想化が進み、オープンなプラットフォームが選ばれていくという。

 「例えば、大和証券や日産自動車ではUNIXからLinuxへ移行したことで、大幅なコストの削減や変化に対応していける力を実現した。佐川急便グループではWindowsからLinuxによる共通基盤を構築している」とユーザー事例を紹介。

 「パートナーエコシステムによって、レガシーシステムからオープンなハイブリッドクラウドへの移行を加速され、今後5年にRed Hat Enterprise Linux(RHEL)の採用を3倍に増やす」と表明した。

クラウドと基幹システム、組み込み機器の3つの領域で採用拡大を目指す

 トットン氏は、商用Linuxを成功に導いた同社の歴史を振り返りながら、現在ではRHELが世界24カ国、28カ所の証券システムにおいて採用され、取引の半分以上を支える信頼ある基盤となったと語る。その背景には、「オープンソースソフトウェア(OSS)のコミュニティーによる絶え間ない努力と技術革新の積み重ねがある」とし、企業ITの新たな挑戦領域とされるクラウドコンピューティングでは、同社の取り組みが企業顧客のビジネスとITを支えるものだと強調した。

Red Hatのジム・トットン氏

 同氏によれば、ハイブリッドクラウドでは「Software Defined Data Center」という概念が重要になるといい、サーバ、ストレージ、ネットワークといったインフラがソフトウェアによって仮想化され、柔軟性や拡張性、俊敏性をユーザーに提供する。これを実現していく部分でもOSSが大きな役割を果たすとし、同社ではOpenStackコミュニティーへの積極的な参加を通じて貢献しているとした。さらに、これから利用シーンが広がるとみられるPaaSでは「開発と運用を柔軟に回していく“DevOps”が活用され、そこでもOSSが使われていく」(トットン氏)という。

 トットン氏は、「この先の10年もダイナミックな革新を生むOSSによるモデルが広がる。コミュニティーのさまざまなプロジェクトから技術革新が生まれ、その革新的技術をRed Hatはパートナーエコシステムを通じて信頼ある製品として市場に提供していく」と話す。RHELやミドルウェアのJBoss、仮想化基盤のRed Hat Enterprise Virtualization、管理基盤のCloud Forms、ストレージのGlusterといった広範なポートフォリオでもってクラウド時代でのさらなる成長を目指すとした。

ハイブリッドクラウドに向けた同社のポートフォリオ

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