日本IBM、Linuxサーバの最上位機を発表 KVMサポートで「x86以外の選択肢に」

PowerプロセッサとLinuxを採用する「PowerLinux」サーバの最新機種では仮想化や可用性、処理性能を強化した。2014年にKVMをサポートするほか、「Power Systems」でもLinux対応を進める。

» 2013年07月31日 14時48分 公開
[國谷武史,ITmedia]
PowerLinux 7R4

 日本IBMは7月31日、Linuxサーバの新製品「PowerLinux 7R4」を発表した。併せてオープンソースの仮想化ハイパーバイザ「KVM」のサポートや「Power Systems」におけるLinux対応の方針も明らかにした。

 PowerLinux 7R4は、16/32コアのPower 7+プロセッサを搭載した4ソケットのハイエンドモデル。仮想化ハイパーバイザのPowerVMを利用することで最大640の論理区画を構成でき、多数の仮想サーバの集約に対応するほか、フラッシュ技術を採用したPCI拡張バスの「EXP30 Ultra SSD I/O Drawer」を利用することで、サーバ筐体を追加することなくビッグデータ分析などの大容量データ処理におけるI/Oの高速化が可能になる。稼働OSはRed Hat Enterprise Linux 6.4以降およびSUSE Linux Enterprise Server 11 SP2以降となっている。

 製品価格は16コア・64Gバイトメモリの最小構成の場合で408万2300円、32コア・128Gバイト構成の場合で593万3500円。8月23日に出荷を開始する。

製品概要

 記者会見したシステム製品事業 パワーシステム事業部の皆木宏介部長は、企業でのLinuxサーバの利用状況について「64%の企業が導入しているという調査結果もあり、適用領域もこれまでWebやメール、ファイル共有などから、ビジネスインテリジェンスやビッグデータ分析、EC基盤など重要な業務分野に拡大している」と説明する。

 こうした状況からLinuxサーバには、「解析用途に耐える処理性能と堅牢性や高信頼性、オープンソースソフトウェア(OSS)対応などが必須条件」(皆木氏)として求められているという。同社での取り組みとして皆木氏は、DB2などIBMソフトウェアの主要137製品でのLinux対応が完了しているほか、OSS対応を推進する意向も表明した。

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 特にOSS対応では今回からPostgreSQLの商用版製品「EnterpriseDB」をサポート。また、協業するレッドハットの本社内(東京・恵比寿)に「PowerLinux検証センタ」を開設し、ユーザー企業やシステムインテグレータなどがPowerLinuxの動作検証を行えるようにした。会見したエンタープライズDBの藤田祐治社長は、「Oracle互換機能の提供とPowerのサポートによる安価なデータベース基盤を提供していける」とコメント。レッドハットグローバルサービス本部の藤田稜氏は、「仮想サーバの集約ではリスクも集約される。一般的なIAサーバより稼働率が高いとされるPowerサーバの活用でミッションクリティカル領域でのさらなる活用を推進したい」と述べた。

 新製品と併せて同社は、AIXを採用するミッションクリティカル向けのPower SystemでLinux環境を稼働させるための「Linux専用エンジン」を開発する意向を表明した。日本IBM システムズ&テクノロジーエバンジェリストの新井真一郎氏は、「ビッグデータやクラウドへの対応ニーズが高まっており、大規模環境においてユーザー企業がAIXやLinuxを選択できるようにするため」と説明する。

IBMはOpenStackへのコントリビューションが多いベンダーの1社。ソフトウェア面だけでなく、ハードウェア面でも具体策を示した

 また、PowerLinuxでは2014年にKVMもサポートする。これにより、オープンソースのクラウド基盤ソフトウェア群「OpenStack」でもPowerLinuxが利用できるようになる見込み。「OpenStackを稼働させるハードウェア基盤はこれまで実質的にx86しかなかったが、Powerが加わることで選択肢は広がる」(マーケティング/ビジネス推進の三原茂部長)という。

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