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» 2014年06月26日 08時00分 公開

もう1つの日本代表:ブラジルW杯をICTで支えたNEC 舞台裏の物語 (2/2)

[國谷武史,ITmedia]
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開幕直前の難局を乗り切れ

 決定したW杯の開催スケジュールを変更することはほぼ不可能であり、システム構築では納期を死守することが絶対条件となる。NECによるスタジアムのICT構築プロジェクトは開催決定直後にスタートし、まず1年ほどかけて具体的なプランを策定していった。

 最初に手掛けたスタジアムが2012年4月に竣工したポルトアレグレ市のグレミオスタジアムだ。同社は大手ゼネコンのOASグループと協業し、ネットワークや監視カメラ246台によるセキュリティソリューションと、ビル管理システムなどの統合ICTインフラの設計・構築を担当している。

NECがシステム構築を手掛けたスタジアム

 W杯開催国ではその開催前年にコンフェデレーションズカップが開催される。W杯会場となるスタジアムの一部は、コンフェデレーションズカップのために先行して整備されるため、ICTシステムの構築はW杯開催の数年前からが本番勝負となっていく。しかも、ICTシステムの導入は施設竣工後になるため、開催直前に作業が集中する。今大会では多くの施設で建設が遅れたことも大きなニュースになった。

 グレミオスタジアムに続いてNECが手掛けたのは、2013年4月と5月に竣工したサルバドール市のフォンテノバスタジアムと、日本代表チームの初戦会場となったレシフェ市のペルナンブッコスタジアムである。フォンテノバではセキュリティシステムやスタジアム管理システム、防災システム、大型のスクリーンや数十台規模のデジタルサイネージを構築した。レシフェ市ではスマートシティ開発プロジェクトにも参画している。

 2つのスタジアムでのICT構築は、ほぼ同時並行での作業だった。「NECでは各システムに担当者を配置し、システム全体の施工管理担当者を含めた1チーム十数人、計2チーム・40人近い体制で対応しました」(山本氏)

 残る2つのスタジアムは、W杯会場であるナタル市のドゥナススタジアムとクリチバ市のバイシャーダスタジアム。ともに2014年に入ってからスタジアムが竣工し、NECでは同様の体制ながら、よりタイトなスケジュールに臨むこととなった。

NEC米州・グローバルプラットフォーム本部中南米グループの山本淳也マネージャー

 「ICTの構築では工程の見直しや機器納品スケジュールの変更といった調整や作業を何度も繰り返しました。実際に現場ではコンセントが見つからない、機器設置場所の寸法が違うといった細かい問題がたくさんあり、作業に当たった担当者の苦労も大きなものでしたが、納期を守ることができました」(山本氏)

 なお、各スタジアムのICTシステムの運用は、W杯期間中はFIFA側が行うものの、それ以外の試合やイベントではNECが行っているという。

W杯開催後も支えていく

 NECは、スタジアムのICTシステム以外にもW杯関連のICTプロジェクトに携わっているという。例えば、ブラジルは地上デジタル放送で日本と同じISDB-T方式を採用しており、NECは放送電波の送信システムを同国で手掛けている。W杯期間中はブラジルの地元放送局が4Kの超高精細映像の試験放送を実施中だ。

 同社ではW杯後もスタジアムのICTシステムの高度化、スタジアム運営企業の収益増や顧客サービスの向上を支援していくという。

 「例えば、セキュリティシステムでは監視カメラの映像から異常行動を自動的に検知する技術を活用することで管理者にアラートを上げることができ、効率的な対応ができるようになります。W杯後もブラジルでは国際的なイベントが続きますので、今回の経験を生かして中南米地域の社会システムに貢献したいと考えています」(山本氏)

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