京都市交通局とASTEMが開発した新しいバスロケは、設置の難しさと高コストの原因となっていたアナログ方式をやめ、汎用の液晶ディスプレイで一括表示するようバス停表示システムそのものを刷新。さらに系統表示モジュールごとに必要だった比較的高額な専用無線装置も、現在京都市全体で導入が進んでいる「公衆Wi-Fi網を応用」することにした。
京都市では2014年末現在(取材時点)、KDDIの無線LANサービス「au Wi-Fi」をベースにした公衆無線LANでの通信インフラが整備されつつある。バス停はその無線LANアクセスポイントの1つに据えられている。2020年オリンピック・パラリンピック開催を控え、日本の主要観光地として観光客へのサービスレベルを高めるのが狙いだ。この公衆Wi-Fi網の仕組みを使い、バス停の到着案内に関する情報のやり取りも、インターネットを使って大幅なコスト削減を図ろうということだ。
表示板も、設置過程で個別に組み立てており費用が余計にかかった従来までの工法に対し、工場内で同じものを製造し、ソフトウェアでデジタル制御できる仕組みになったため、設置までのコストメリットや容易性も高まった。
運用の仕組みもかなり変えた。運転士の「次のバス停アナウンス操作」をトリガーに、管理センター経由でそれぞれのバス停へ送る仕組みを踏襲しつつ、その通信には一般開放を目的に拡充を図っている公衆Wi-Fiへ相乗りして、コスト削減に成功している。
センターに集約した情報を他にも活用すれば、スマホ向けのバス待ち情報アプリを提供するといった顧客サービスの拡充も期待できる。実際、今回の新バスロケは携帯電話向けに提供する現サービス「ポケロケ」を応用したものだ。
そしてBeaconシステムの、“なるほど、そういう使い方でもよいのか”という使い方も提案してくれた。新型バスロケは、バス停への接近を把握するためにBluetooth通信を用いるBeaconシステムを採用した。バスの乗降ドア付近にBeaconモジュールを置いておき、バス停へ近づくとBeaconが反応する。汎用のBeaconモジュールで運用できるため、専用無線などを使う方法よりイニシャルコストが下げられる。ここは導入の決め手の1つだったという。
Beaconモジュールはバス左前の乗降口付近に設置され、半径5メートル、100ミリ秒間隔でBeacon信号を絶えず発信している。バス停がバスからのBeacon信号を検知すれば、バスが到着したことになる。これが「まもなくきます(Approaching)」の表示を消すスイッチになる。
Beaconシステムをこう使う方法は、意外だがこれまであまり見られなかったように思う。本システムのBeaconモジュールは単三電池2本で動作するもので、約1年間動作する。京都市交通局の説明によれば、バスの定期メンテナンスの過程で電池も交換することにしたため、運用上の問題はほぼないという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.