京都市営バスを便利にするIoT、「ハイテクバス到着案内システム」の裏側Beaconと公衆Wi-Fi網をうまく応用(2/3 ページ)

» 2015年01月06日 15時00分 公開
[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

対策と方法:公衆Wi-FiやBeaconを組み合わせた新システムへ刷新

 京都市交通局とASTEMが開発した新しいバスロケは、設置の難しさと高コストの原因となっていたアナログ方式をやめ、汎用の液晶ディスプレイで一括表示するようバス停表示システムそのものを刷新。さらに系統表示モジュールごとに必要だった比較的高額な専用無線装置も、現在京都市全体で導入が進んでいる「公衆Wi-Fi網を応用」することにした。

photo 新型のバスロケは物理的な専用モジュール方式をやめ、大型の液晶ディスプレイで一括表示する仕組みとした。情報の表示量、管理の容易さ、製造・設置などの運用コスト面が大きく削減できる。なにより、今後の観光都市として重要な多言語表示も可能になった

 京都市では2014年末現在(取材時点)、KDDIの無線LANサービス「au Wi-Fi」をベースにした公衆無線LANでの通信インフラが整備されつつある。バス停はその無線LANアクセスポイントの1つに据えられている。2020年オリンピック・パラリンピック開催を控え、日本の主要観光地として観光客へのサービスレベルを高めるのが狙いだ。この公衆Wi-Fi網の仕組みを使い、バス停の到着案内に関する情報のやり取りも、インターネットを使って大幅なコスト削減を図ろうということだ。

 表示板も、設置過程で個別に組み立てており費用が余計にかかった従来までの工法に対し、工場内で同じものを製造し、ソフトウェアでデジタル制御できる仕組みになったため、設置までのコストメリットや容易性も高まった。

 運用の仕組みもかなり変えた。運転士の「次のバス停アナウンス操作」をトリガーに、管理センター経由でそれぞれのバス停へ送る仕組みを踏襲しつつ、その通信には一般開放を目的に拡充を図っている公衆Wi-Fiへ相乗りして、コスト削減に成功している。

 センターに集約した情報を他にも活用すれば、スマホ向けのバス待ち情報アプリを提供するといった顧客サービスの拡充も期待できる。実際、今回の新バスロケは携帯電話向けに提供する現サービス「ポケロケ」を応用したものだ。

photo 新タイプのバスロケは大きく2カ所のシステムを刷新した。バスがどのバス停へ向かっているかの情報を通知する仕組みは従来どおりだが、この情報は管理センターのサーバへ蓄積され、同様に整備を進めた公衆Wi-Fi網経由で各バス停へ送信する方法に変えた。バス到着の識別のためのBeaconシステムも組み合わせて、より正確にバスの運行状況を把握できるようにした

 そしてBeaconシステムの、“なるほど、そういう使い方でもよいのか”という使い方も提案してくれた。新型バスロケは、バス停への接近を把握するためにBluetooth通信を用いるBeaconシステムを採用した。バスの乗降ドア付近にBeaconモジュールを置いておき、バス停へ近づくとBeaconが反応する。汎用のBeaconモジュールで運用できるため、専用無線などを使う方法よりイニシャルコストが下げられる。ここは導入の決め手の1つだったという。

photo 93系統のバスが到着。「まもなくきます(Approaching)」(写真=左)だった表示が到着と同時に消えた(写真=右)。バスの先頭部に置かれたBeaconモジュールに反応し、バスロケがバスの到着を認識したわけだ

 Beaconモジュールはバス左前の乗降口付近に設置され、半径5メートル、100ミリ秒間隔でBeacon信号を絶えず発信している。バス停がバスからのBeacon信号を検知すれば、バスが到着したことになる。これが「まもなくきます(Approaching)」の表示を消すスイッチになる。

 Beaconシステムをこう使う方法は、意外だがこれまであまり見られなかったように思う。本システムのBeaconモジュールは単三電池2本で動作するもので、約1年間動作する。京都市交通局の説明によれば、バスの定期メンテナンスの過程で電池も交換することにしたため、運用上の問題はほぼないという。

photo Beaconモジュールはこの位置に設置されていた。バス停がバスの接近を感知するのに最適な位置を研究した結果決めたという。Beaconモジュールは単三乾電池2本で約1年利用できるとのこと

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ