駅をもっと便利にしたい──顧客サービスのさらなる向上を目指し、JR東日本が「SDNソリューション」を導入し、JR東京駅と新宿駅で運用をはじめた。SDNを選定した経緯と理由、それは私たちにどんな効果をもたらしてくれるだろうか。
「スマホがつながらない」「まるでダンジョンのようだ」──。鉄道の「駅」は多くの人が日々利用する公共交通の主要スポット。とても身近な存在であり、それだけに前述したような感想を漏らすこともあるだろう。それをスッとなくし、もっと便利に使ってもらえるよう改善したい。そんな「近未来のいいね」をJR東日本が新たなITシステムで実現しようとしている。
関東、甲信越から東北まで、広い範囲を事業エリアとする東日本旅客鉄道(JR東日本)。首都圏の生活基盤である東京圏鉄道ネットワークと東京から5方面に伸びる新幹線輸送ネットワークを抱え、営業線区は70線区、述べ7512キロ、駅数は約1700。1日に約1650万人の顧客がJR東日本の駅を利用する。
JR東日本は、中でも東京の表玄関となるターミナル駅で、1日に約41万6000人(2013年度結果、JR東日本エリア3位)が利用する「JR東京駅」へ、構内施設の通信基盤に「SDNソリューション」による「駅構内共通ネットワーク」を構築した。
公共交通機関を事業の主軸に据える鉄道事業者は、鉄道輸送における安全、サービス品質、地域との連携を主とした「変わらない使命」を持っている。2012年、JRグループは「Ever Onward 限りなき前進」と銘打つグループ経営構想を打ち出し、この変わらない使命に加えて「技術革新」「新たな事業領域への挑戦」「新しい企業風土づくり」をテーマにした持続的成長を推進する方針も示した。
東日本大震災を機に高まった「鉄道の、社会からの期待」に応える改善、そして2020年東京オリンピックを前に、海外渡航者を中心に急増する観光客・乗客のニーズに応える対応をすべく、「これまで以上にサービス品質を向上させる」のが大きな狙いだ。
鉄道をより快適に利用してもらうため、駅構内にはすでにさまざまなITシステムが稼働している。例えば、職員のバックサイドOA(端末、電子メール、収入管理など)や電話などのレガシーシステムから、自動改札や券売機、構内放送装置、運行情報表示のための配信ディスプレイ、防犯・設備監視カメラ、広告・宣伝のためのデジタルサイネージ、駅内店舗などがある。
このほか、スマートデバイス利用者の急増にともない、駅構内の携帯電話基地局設備や公衆無線LANスポットが改善、拡充され、最近では「地下・トンネル区間もケータイ圏内」になるよう改善が進んだのも記憶に新しい。
これまでこのような新たな顧客サービスは、用途ごとに個別案件として選定され、それぞれ個別のネットワークとシステムで構築していた。このため、新たなサービスの導入には、
という課題を抱えていた。顧客のサービス改善への需要は理解しているが、現システムの現状とコスト面の課題から、それに見合う投資かどうかの判断がしにくかった。また、物理的に実現までの工事期間もかかるため、結果としてさらにコストを上乗せして検討する必要もあった。
「これまでのネットワークシステムでは、タイムリーな新サービスの導入が困難だった。もっと早くお客様が望み、必要とされるサービスを実現するにはどうするか。これが大きな課題だった」(JR東日本 電気ネットワーク部の殖栗英介氏)
具体的には、
の実現に何が必要かを模索していた。
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