データが変える、クルマの未来とIoT(2/2 ページ)

» 2015年03月25日 08時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]
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自然言語で音声操作、宅配サービス、自動運転も

 “IT化”と“サービス化”が進むとクルマはどうなるのか。レンクヴィスト氏は「センサーデータを生かせば、外の気温に合わせて自動で空調を調整したり、整備の時期が近づくと自動でユーザーに教えてくれたり。操作もタッチパネルではなく、安全性を重視して音声認識が主流になるだろう。車載コンピュータがクラウドにつながれば自然言語の理解も進む。iPhoneのSiriのようなイメージだ」と話す。

 また、同社が行っている研究もこれからの自動車を示すヒントになりそうだ。2014年に発表した、クルマを宅配物の受け取り場所として利用できるサービス「Roam Delivery」は、ユーザーが商品の受け取り場所を自分のクルマに指定すると、1回だけトランクを開けられる「デジタルキー」が配送業者に送られるというシステムである。クルマと所有者のスマートフォンはつながっているので、配送が完了するとスマートフォンに通知が来る。

photo ボルボが2014年に発表したクルマを宅配物の受け取り場所として利用できるサービス「Roam Delivery」の利用イメージ(出典:Volvo Cars)

 このほかにも、ネットワークに接続し、周辺の自動車との事故を避けるよう通知する自転車用ヘルメットを「International CES 2015」で発表したり、スウェーデンのイェーテボリ市内で一般のユーザーが100台の自動走行車を公道で走らせる「Drive Me」という実証実験プロジェクトを2017年に実施するべく研究を進めている。

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ボルボが考える自動運転のコンセプトムービー

 とはいえ、自動車がネットワークにつながるとリスクも生まれる。例えばデータの送受信で個人情報が漏えいする可能性があるため、ボルボでは個人データの取り扱いについてオプトイン形式(許諾を取る形式)を採用し、匿名データに変換して取り扱うとしている。しかし、「将来的には、自動運転システムがハッキングされるといったリスクも出てくるため、今後は自動車のセキュリティも重視すべきだ」とレンクヴィスト氏は語る。

データが変える、クルマの未来

 こうした未来の自動車技術を支えるのは大量の“データ”だ。多くのコンピュータが詰まったクルマから得られるデータは実にさまざまなものがある。走行情報のほか、アプリとして提供したサービスがどれだけの人に使われているか、どのデバイスと連携させているか、ユーザーがどうサービスを使っているか……これらのデータはユーザーが求めている情報や、ユーザーがどうクルマを使っているかを教えてくれる。

photo アプリの導入率やユーザーが車載システムと連携しているデバイスのOSも把握できるという

 大量のデータを解析するためにボルボはテラデータのシステムを利用している。数百万台にものぼる車両から得られるデータと、業務システムのデータをどう結合して機能させるか――。これが同社の課題だったという。「数多くのアプリケーションとレガシーシステムで組まれた社内システムが複雑に絡み合い、情報共有も大変だった。そのため大容量のデータ基盤が必要になった」(レンクヴィスト氏)

 車載センサー、ドライバーの挙動、組み立て工場の情報など、あらゆるデータを一元的に管理し、社内のしかるべき部門に深い洞察を提供する。ソーシャルやモバイル機器といった非構造化データも含めて、リアルタイムな分析が可能な点もサービスの進化に必要なポイントだという。

photo さまざまなデータを一元化し、分析するというデータ統合がVolvoのコネクテッド・カーを支えている

 各種データの傾向は車種によって大きく異なり、そこで得られた知見は、製品開発部門やサービス開発部門にフィードバックされ、サービス品質の改善、つまり次世代の車両仕様や装備に生かされるという。「今後は車種開発にデータを生かしていく」と話すレンクヴィスト氏。ITとクルマ、両者の融合がさまざまなビジネスを一変させる日はもうすぐだ。

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