スイッチオンで即、農業IoT “ITかかし”が切り開く農業の新境地(2/2 ページ)

» 2015年10月15日 08時00分 公開
[後藤祥子ITmedia]
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産地間競争に勝つため、“データ栽培”に着手

Photo 京都・与謝野町では米の栽培レシピが完成した

 10月14日から一般向け販売がスタートしたe-kakashiだが、既に試験導入を開始している自治体もある。積極的な農業改革で知られる京都・与謝野町もその1つだ。

 与謝野町は、科学的な見地に基づく農業の形を模索する中でe-kakashiと出会い、2013年から実証実験を開始。現在、親機と子機合わせて11のセンサーが稼働しており、与謝野町の作物栽培レシピができつつあるという。

 「与謝野町で米を作るための基本データや、環境に依存する部分の対応策、生育ステージごとにやるべき作業を農業試験場がインプットし、類をみない科学データに基づいたレシピが完成した。与謝野町のノウハウができた」(与謝野町の町長を務める山添藤真氏)

 「精密な農業を実践するためには、勘と経験だけではうまくいかない。それをレシピに生かして安定供給を図りたい」――。こう話すのは、JA栗っこ農業協同組合の常任理事を務める高橋英夫氏だ。

 「農業現場が大きな変革の中にあることを痛感している」と話す同氏は、産地間競争の中で生き抜くためには“データを栽培に結びつけることが重要”だと意気込む。生産現場に関心を持ってもらうために、e-kakashiが集めた栽培データを消費者との共有を検討するなど、一歩先行く取り組みも検討中だ。


 和食がユネスコの無形文化遺産に登録されるなど、“日本の食”は今、世界の注目を集めている。その素材となる農産物の生産に、ITの力が欠かせなくなるのも、そう遠いことではなさそうだ。山口氏は「日本を農業輸出国にする」と意気込んでいる。

Photo e-kakashiをメンテナンスの手間をかけずに使える仕様にするため、日立製作所と共同で開発。パーソナルエリアネットワークの構築や安全な通信、悪天候でも稼働するタフネス性能、10分に1回データを送信した場合で3年間使えるバッテリー、クラウドからアプリを書き換えられる機能などを実装している

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