スピード経営時代に効く、「アプリ・サービス開発」の新潮流

教員にも“1人1台タブレット”、「iPad用業務アプリ」を内製する中学校開発者は1人の職員(1/3 ページ)

学校での“1人1台iPad”と聞くと、生徒への配布をイメージする方が多いだろう。しかしタブレット活用が進んでいるのは、生徒だけではない。教職員全員がiPadを使う桜丘中学・高等学校では、職員自ら開発したiPadアプリを業務の課題解決に使っている。

» 2015年12月07日 08時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]

 “2020年までに1人1台のタブレット”――。そんなビジョンを文部科学省が掲げていることもあり、近年、タブレットを使ったIT授業を導入する学校が増えてきている。

 こうした学校では“小学校や中学校の生徒にタブレットを渡すと、授業中もそれ以外の時間も積極的に使ってくれる”という話をよく聞く。今ではむしろ、教える側がもっとタブレットに慣れる必要がある、という声もよく聞かれる。

 こうした背景から、1人1台のタブレット環境を生徒だけではなく、教員にも適用する動きもある。東京都北区にある私立中高一貫校、桜丘中学・高等学校もそんな学校の1つだ。同校は生徒に先駆け、2013年度に全60人の教職員に対してiPadを配備し(2014年に全生徒約800人に配備)、現在は学校説明会や入学試験の際にiPadを使っているという。

photo 桜丘中学・高等学校

「iPadのいい使い方はないかな」

photo 同校ICT推進課・入試対策課の西岡朱里さん。ファイルメーカーの年次イベント「FileMaker カンファレンス 2015」で講演を行った

 新しいツールやデバイスを与えても、使い道がすぐに出てくるわけではなく、結局使わずじまいに――。企業の導入でよく聞く話だが、桜丘中学・高等学校も同じような状況だった。40代以降の教員を中心にタブレットを触った経験がない人が多く、iPadをほぼ使わない教員もいたという。

 「iPadを多くの教員に使ってもらうにはどうすればいいか」。同校でICT推進を担当する西岡朱里さんは頭を悩ませていた。校務システムで使う方法も考えたが、当時はAccessでデータベースを構築したWindowsベースのシステムを使っており、iOSに対応すると多額の費用がかかることから、システム改修は現実的ではなかった。

 そんなときに副校長の品田健さんから「FileMaker」の存在を教えてもらった。同社のイベントで、FileMakerで作られた受付システムを見て、「学校説明会に使えるのではないか」と思い付いたのがきっかけだったそうだ。

 西岡さんがFileMakerを検討する中で注目したのは、多くのOSに対応する点だ。彼女は業務でMacを使うことが多いが、教師の多くはWindowsマシンを使っており、iPadにも対応させたい……これら3つのOS全てに対応するデータベースを作れる点が導入の決め手となった。

 もちろんシステム開発を外注する手もあったが、インハウス開発を選んだのは、“かゆい所に手の届く”アプリが作れるためだと西岡さんは話す。「外注すると業者側の仕様にユーザーが合わせる部分が出るのが一般的ですが、内製であればユーザーの声に合わせて柔軟に仕様を変更できます。また、学校独自の用語やフレーズが使えるのも大きなポイントです。自分たちが普段使っている言葉なので、アプリを見ただけで使い方をイメージしてもらえるのです」

 こうしてFileMakerでのアプリ開発を始めた西岡さん。彼女が最初に手掛けたのは、学校説明会用のアプリだった。

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