米国に見るクリーンエネルギーでのビッグデータ活用と地域振興ビッグデータ利活用と問題解決のいま(1/4 ページ)

COP21で「パリ協定」が採択され、米国での地球温暖化対策が注目されている。同国におけるクリーンエネルギー分野でのビッグデータを活用した地域経済振興策とはどのようなものか。

» 2016年01月21日 08時00分 公開
[笹原英司ITmedia]

 2015年12月12日、国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)が採択した「パリ協定」を受けてクローズアップされているのが、米国の地球温暖化対策だ。クリーンエネルギー分野におけるビッグデータを活用した地域経済振興策が本格化しようとしている。

スマートグリッドとビッグデータの融合で電力使用量を削減

 米国では2008年のリーマンショック後の景気浮揚策として制定された「2009年米国再生再投資法(ARRA)」に基づくスマートグリッド支援策を契機に、エネルギー省が全米各地でスマートメーター導入プログラムを推進した(関連資料)。

 そのうちの1つが、テキサス州オースティン市の中心地から数kmの距離にある空港跡地を対象地域とする「ピーカンストリート・スマートグリッド実証プロジェクト」だ(関連情報)。

ピーカンストリート・スマートグリッド実証プロジェクトの全体イメージ(出典:Pecan Street Project「Introducing Pecan Street Project」、2010年8月)

 2010年〜2015年に実施された実験では電力、ガス、水道を包括的に管理する「Energy Internet」の構築と、地域コミュニティ「Mueller」の住民による積極的な参加がテーマとなった。オースティン市(オースティン・エネルギー)、テキサス大学オースティン校および民間企業(Dell、Intel、LG、ソニーなど)の産官学連携をコーディネートする非営利組織「Pecan Street Inc.」が、プログラムの運営主体となり、一般住宅1000戸と小規模商業施設25カ所、公立学校3校を対象に実証実験を行っている。

 対象地域の全住宅にスマートメーターと高度メーターインフラストラクチャ(AMI)を設置し、生成されるエネルギーデータを集約・蓄積。家庭用エネルギー管理システム(HEMS)でエネルギー使用状況を把握し、高度分析ツールで需要を予測・可視化する仕組みが導入された。スマートメーターは、太陽光発電システムや電気自動車(EV)および蓄電機能と統合されており、余剰電力の売買も可能だ。

 実証実験の結果、低炭素で効率的な電気利用が実現された。エアコン機能に関しては、オースティン市内の一般的な既設住宅と比較して、38%の電力使用量が削減された。現在ピーカンストリート・プロジェクトは、オースティンから米国内17州、住民1300人の規模まで拡大し、2000以上のセンサー/モニタリング機器から生成されるビッグデータを日々収集・分析している。

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