続いて登壇したフィンランド企業KONEの米国法人エグゼクティブバイスプレジデント、ラリー・ウォッシュ氏は、人の動きに着目した付加価値の高いサービスの実現に取り組んでいると語った。同社はエレベータやエスカレーターなどのグローバル大手メーカーである。
「今では街や建物から人の流れを知ることができる。そのデータを活用し、人をスマートに、安全に運ぶことができるようになる」(ウォッシュ氏)
そのイメージとしては、例えば、朝オフィスに出勤しようとビルの入退室管理システムにIDカードをかざす。「A社のBさんがビル内に入った」ことがデータとしてエレベータシステムに共有されると、システムが最寄りのエレベータをすぐに向かわせる。Bさんがエレベータに乗り込むと、Bさんが降りるフロアのボタンを押すことなく、エレベータが自動的にA社のフロアまで運んでくれる。
「こうしたことができれば、人の移動に合わせながら効率的にエレベータを運用でき、無駄なエネルギー消費を減らすことができるだろう」(ウォッシュ氏)
同時にエレベータに取り付けたセンサからの稼働状況に関するデータをWatsonに蓄積、分析しておくことで、エレベータの故障につながる予兆を検知してトラブルを未然に回避することも可能になるという。ウォッシュ氏は、このようなIoTとコグニティブの“合わせ技”による活用シーンを示した。
IBM クラウドインテグレーション担当ゼネラルマネジャーのマリー・ウィッグ氏は、多数のAPIをつなぎ合わせることで、旧来のビジネスモデルや常識にはとらわれない新しいサービスと価値を創造できると強調する。
こうしたAPI群についてInterConnect 2016ではWatsonに3つ追加され、基幹システム系のデータをクラウドに展開するものでは「WebSphere Cloud Connect」や「z/OS connect」(z Systemのアプリやデータをクラウドに展開するAPI)、「Message connect」(メッセージングのクエリをBluemixに接続するAPI)などが新たに発表された。さらにはユーザー自身でもAPIを開発、公開できる「API connect」も提供される。
IBMが今回のInterConnect 2016で一貫して主張するのは、今後すべての企業のITシステムがハイブリッドクラウドになるという点。ハイブリッドクラウドが主流になるという見方は、IBMに限らないが、InterConnect 2016では特にオンプレミスやパブリック/プライベートクラウドがAPIによって密結合されていく世界を、その利活用シーンまでも含めて強く印象付けるものになっている。
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