おいしい野菜は“データ”でつくる 経験者ゼロの農業ベンチャーが成功したわけ農業経験者ゼロを逆手に(2/3 ページ)

» 2016年03月25日 14時00分 公開
[後藤祥子ITmedia]
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 もう1つは、生産拠点と取扱店舗が増えたことから、情報共有に遅れが生じるようになったことだ。野菜は天候によって成長の速度が変わるため、店舗の発注に応じた生産量を確保できるかどうかを営業担当と生産拠点の担当者が密に連絡を取って確認する必要がある。このコミュニケーションが機能していないと、野菜を余らせたり、店舗側に野菜を納品できないという事態が起こってしまう。

 「野菜は天候などの影響で、生産予定量と実際に収穫できる量には誤差があるんです。例えば生産するのにかけたコストに対して出来高が10%上下すると、利益を10%捨てることになってしまう。この差をどうやって縮めるかは大きな課題なんです」(三原氏)

 当初は1週間に1回、スタッフが会社に集合して会議を行い、Excelベースで情報を共有していたが、営業先の店舗や生産拠点が増えるに従ってそれも難しくなってきたと三原氏。ITを使った効率化を考え始めたという。

 「私もスタッフも全国を渡り歩いているので、いちいち会社に戻るのは非効率なんです。離れた場所にいても、生産見込みや受注の最新データを見ながらコミュニケーションする方法があれば――と思うようになりました」(同)

急な変更に対応できる柔軟性とコストを重視

 ソリューションを探す上で重視したのは、途中で情報の入力項目に変更があった場合でも柔軟に対応できること。「成長過程のベンチャーなので、生産する野菜の品種が増えたり、提携農家が増えたり――といったように、状況は常に変わります。“システムにとらわれて変われない”という状況だけは避けたかった」(同)

 Excelデータのやりとりで情報共有することも検討したが、メールで送受信しているうちに、誰がどこを編集したのかが分からなくなったり、最新バージョンを探すのに時間がかかったりすることから見送ったという。「リアルタイムで皆が情報を入力できて、誰もが常に最新の情報をチェックできる環境が理想でした」(同)

 もう1つのポイントはコスト。出張先から和歌山に帰る飛行機代より安くなければ導入した意味がないので、安価に使えるソリューションを探したという。こうした条件に見合っていたのが業務アプリ開発基盤の「kintone」だった。

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