「プライバシー侵害はイヤ、でも対策はしない」日本人成迫剛志の『ICT幸福論』

世界で最もプライバシーを気にしながら何もしない日本人の実態とは?

» 2016年06月01日 13時00分 公開
[成迫剛志ITmedia]

この記事は成迫剛志氏のブログ「成迫剛志の『ICT幸福論』」より転載、編集しています。


 あるイベントの講演で、日本の消費者のプライバシーセキュリティ感覚に関する興味深い調査結果があり、出典元の“EMC Privacy Index 2014”を見てみました。

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 “EMC Privacy Index”は、世界15の国と地域、1万5000人の消費者を対象に、オンラインプライバシーに対する消費者の意識と動向を調査したものです。

 さまざまな調査項目(質問項目)があるのですが、日本人の意識に焦点を当ててピックアップしてみると、その極端さが浮き彫りとなりました。

“自分のプライバシー”は誰が守るのか?

 日本人は調査対象の15カ国中、最もプライバシーに関して保守的であり、情報漏えいを恐れ、また政府の対応を最も不満足に思っているのです。しかしながら、個人個人のプライバシー対策に関しては、15カ国中最も対策を行っていないという調査結果となっています。

 「プライバシーを一番気にしているが、プライバシーを自分で守ることはせず、国や誰かが守ってくれると思っている」という国民性とも思えてしまう結果なのです。

 個人情報保護法の過剰反応ともいえる結果です。質問の中の「代償」という単語がよくないのかもしれませんが、利便性向上のためにプライバシーが使われることに関して、15カ国中最もネガティブな反応です。

Photo 「利便性と使いやすさの向上の代償として若干のプライバシーを犠牲にしても良いと思いますか?」

 今後のプライバシー保護に関しても、15カ国中最も悲観的な国となっています。

Photo 「今後5年間で自分のプライバシーを維持することは今より難しくなると思う。『同意する』の割合(%)」

 世界で一番、プライバシーについて心配していることからか、政府のプライバシー保護の施策に最も不満を抱いている人が多いのも日本です。

Photo 「自国のさまざまな行政機関は一般市民のプライバシーを保護するために作業を行っていると思う。『同意する』の割合(%)」

 それでは、個人としてのプライバシー保護・セキュリティ対策の意識はどうでしょうか?

 定期的にパスワードを変更している人は、わずか22%です。

Photo 「プライバシーを守るために、定期的にパスワードを変更している。『はい』の割合(%)」

 また、最も基本動作ともいえる「個人情報が含まれる文書を廃棄する際にシュレッダーにかけている」割合は55%以下という結果です。これも残念ながら15カ国中、中国やインドよりも低いワースト1です。

Photo 「個人データが含まれている文書を捨てる前にシュレッダーにかけている。『はい』の割合(%)」

 プライベートなことを書き込みことの多いSNSなどのプライバシー設定をカスタマイズしている割合も50%で最下位です。

Photo 「ソーシャルネットワークに登録する場合はプライバシー設定をカスタマイズしている。『はい』の割合(%)」

 いつも持ち歩くからこそ気を付けておきたい「携帯電話やタブレットなどのパスワード保護を行っている」割合も36%と最下位。ブービーのロシアは50%超えですから、ダントツの最下位といえます。

Photo 「携帯電話やタブレットなどのモバイルデバイスをパスワードで保護している。『はい』の割合(%)」

 現代はデジタルビジネス化の時代です。デジタル世界、サイバーワールドの安心・安全について、国や事業者ができることには限界があります。日本の消費者も個人個人が自己責任で対策を行うように、啓発活動を行っていく必要がありそうです。

 「自分のプライバシーは自分で守る」ことができるようになるために。

著者プロフィル:成迫剛志

SE、商社マン、香港IT会社社長、外資系ERPベンダーにてプリンシパルと多彩な経験をベースに“情報通信技術とデザイン思考で人々に幸せを!”と公私/昼夜を問わず活動中。詳しいプロフィルはこちら


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